◇zack×aerith◆

□震える子犬。/微切
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「よ、エアリス」


彼が突然、髪型を変えた。

なんの前触れもなく、だ。髪型を変えるのなんてその人の自由だけど、何故だろう。心に引っかかるものがあった。


「…ザックス」

「ん?」


いつものように微笑みながら、その蒼い瞳を私に向ける。

でもいつもと違う
髪型が、違う

前回見た彼は、サイドの髪を前におろし、前髪を作っていた。でも今は、一束だけ髪をおろし、あとは全て後ろに流している。


大人っぽくなった気がするのは気のせいか。髪型ひとつで雰囲気は変わるものだと思った。


「髪型、変えたんだね」

「まぁな」

「似合ってる」

「お、ありがとな」


なんと言うのがベストなんだろう。髪型を変える、というのはその人の自由。だけど何か感じるものがある。

あまり干渉しない方がいいのかもしれない。


だけど、私だって。


「何か、あったの?」


あなたが、知りたい。

のに、




「なんでもないよ」


またそうやって、説得力のない笑顔で笑うんだ。

彼はいつでも私を知っているのに、私は彼を知らない。


「イメチェン、かな?」

「そんなとこ」

「女の子がよってくるね」

「俺には、エアリスだけだよ」



その言葉が、とても深く。深く聞こえた。

私と話していながらもどこか上の空の彼は、やはり何かあるのだろう。


「そ、よかった」


私がそう返すと、くすっと笑って座り込む。いつもの、胡座。「どうしたの?」って聞いたら、苦笑いして「疲れた」の一言。

ぴったりだと思った。今の彼にその言葉は。いつもだったら、しつこいくらいに話し掛けてくるのに。なんて、大人しい。


ふと、天井を見上げる。
彼があけた、小さいけど大きい、そんな穴。

そこからは光が差し込んで、この教会をいつも暖かい光で包んでくれる。


こんなちっぽけな空じゃなくて、今度おっきな空を、あなたと見たいな


そんな想いを込めてみる。


「この屋根の向こうには、綺麗な空が広がってるんだよね。お花たち、喜ぶ…かな…?」


干渉しないよ。
抱き締めるだけ。

涙の理由は聞かないから






震える子犬。

(ねぇ、お願い)
(独りで抱えないで)





END
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