□罠
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『罠』



「今日、練習あっかなぁ」
水谷が窓から空を見上げて、呟く。

今日の空色は鉛色。
重そうな雲が湿気を含んで。
今にも垂れてきそうだ。

「…だな。体育館とってねぇしな」
部活ないと、ぶーたれるだろうな。
…アイツが。

「あ、俺担任に呼ばれてんだ。
先、部室行っといてくんね?
俺始まりに間に合わなかったら、先に始めてもらうよう監督に伝えて」

終礼が終わって、チャイムが鳴る。
部活のない奴はさっさと鞄を持って教室から出て行く。
俺は部活の前に、担任からの用事を思い出して。水谷にソレを伝える。

「うん わかった」

水谷はそう言って、鞄を取って教室を出て行く。

俺はその姿を見送って、
そのまま職員室へ足を運ぶ。
どうせたいした用事じゃない。書類を教室へ運ぶだけの要員で呼ばれただけだ。

扉を開ける。
「せんせー」
「あぁ。…花井。さっそくだけど、この山とこの山。
3組にも置いてきてもらえるか?悪いな。頼む、テスト係」
「いいっすよ。…係だし」
面倒なことに、俺の組だけ「係」なるものがある。
小学校のときにあった生き物係とか、そうゆうやつ。
うちの組では、テストとか、漢字検定とか、勉強に関するものに限定されてる。

「…ふー」
かなりの量のテスト用紙を運び終える。
3、4回職員室と別棟の教室を行き来したか。
急げば部活に間に合うかもしれない。

「…失礼しましたぁ」
職員室を出て、時間をチェックする。
「…」
こっから廊下を走って。
部室に飛び込めば。
着替えは30秒で。
始まりに間に合うかも、しれない。

俺はそう計算して、足を速める。
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