□まっすぐ。
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疑ったことなんか、
いちども、ない。



『まっすぐ』







「俺」
一瞬、間が空く。
「オマエのこと好きなんだ」
言い切ってから、大きく息をつく。
「…お、俺も」
間髪いれず三橋も言う。

あーだから。
「ちがくて。好きなんだって。そうゆう好きじゃなくて」
自分でも情けないことを言っていると、思いながら。
三橋の頭にクエスチョンマークが飛ぶ。
「…?」


あぁもう。
通じないと思ったけど、やっぱり通じない。
諦めにも似た、でもそれすらいとしいような気持ちで、笑えてくる。

「…まぁいいや。どうせ意味なんかわかんねぇだろ」
そう俺が呟くと、
「意味」
と言って、三橋が顔を上げる。


「い…意味なんかない よ。お、俺、あべくんを好きなだけだ」

三橋が必死な顔で。

――。
そりゃ、そうだろうよ。
そうなんだろうけど。

今にも泣きそうな顔。
今にも下瞼から、水が溢れそうになっている。

あー、ハイハイ。わかったわかった。
俺の降参で。
オマエにとっては、それしかないんだよな。
好きの意味とか、どうゆう好きかとかなんて、
関係なくて。

・・・ふと、優しい気持ちになって、
三橋の頭に手のひらを乗せる。
いつもみたいにビクつかない。
柔らかい髪の毛。
柔らかい、空気。





END

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