□どうしてこんなに
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廊下を曲がった、そのむこう。
窓越しに見える、自転車置き場。
西日の差す、放課後の教室。
…そのどこか、に。
そのどこかに、姿を探して。

どうしてこんなに、気になるかな。

『どうして こんなに』


「三橋!」
思わず、声をかける。
廊下の先に、三橋の後姿が見えて。

茶色い髪が、ふっと揺れるのが見えて。
その頭が、俺の声でふと振り返る。
三橋の、驚いた顔。

その顔を見て、
あぁ、またつい大声出しちまった
と一瞬で後悔する。
また、びびられんだろな。
また、俺が怒ってると、思って。
この後に続く、いつも通りのすれ違いを予想して、
勝手に胸がざらつく。

「…あ、べくん」
か細い声。
ふと、予想外に名前を呼ばれて。
「あー…、」
予想外に、こいつがちょっと嬉しそうな顔、するから。

「な、何」
三橋が傍へ駆け寄ってくる。
なんだよ。…子犬、みたいに。
駆け寄ってくる三橋のその、
ちょっとはにかんだような笑顔を、
ぼぅっと見ているうちに。

「…用事」
あったんだけど。

「…忘れた」

END

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