□seems to be sad…
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あなたの色んな顔を知ることはうれしくて。
それでもなぜだか、
――苦しくて仕方ない。


『seems to be sad…』


「三橋ィ、テストどうだった?」
田島君が俺に、そう問いかける。
言いながら、俺の机の横にわざわざ椅子を持ってきて、
すとん、と座った。
学期末のテストのことだ。

テスト週間は一週間、部活もなくて。
俺、けっこう勉強した。
次、数学赤点だったら、お前ほんとにヤバイ、って、
花井君にも西広君にも、…阿部君にも言われた。

言われながら、…な、なんか皆に構われて嬉しいとか、
のんきに思ってたんだけど。
けど。

『おっまぇ!そのノート!』
野球部の皆で、ファミレスで勉強してた時。
古典のノートを、花井君に見せてもらって写してた、だけのつもりだったんだけど。

花井君がそう言って、呆れた顔で俺のノートを手に持ったんだ。
『…阿部』
『…わーってるよ』
手にとったその真っ白なノートを阿部君に向かって見せて、
花井君は阿部君と同時にため息をついた。

授業中は、いつも、眠ってる。
机に突っ伏して寝てるときもあるけど、
大体頬杖をついたまま、うなだれて眠ってしまう。

真面目に聞こうと思っても、全然ダメなんだ。

まぶたが自然に下りてきて、
頭もだんだん靄がかってきて、
思考が言葉を結ばなくなって。

だから、これまで授業のノートって、
ほとんど白紙で。

阿部君は数学が得意なんだ。
あ、頭いい…もんね。
俺、イチバン苦手だ。

せっかく教えてもらっても、
何度も何度もため息つかれて。
これじゃダメだって思うんだけど、
公式の説明を聞いてるだけじゃ、
いざ自分ひとりでやろうとしてもまるでダメだ。

その時も。
阿部君はマンツーマンで一生懸命説明してくれた。
…んだけど。
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