□問いかける言葉
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鬱陶しい。イライラする。
苦しい。悲しい。
せつない。
全部、自分ひとりじゃどうしようもできない。
…いつも、言葉を探してる。


『問いかける言葉』


最近、なんだかぼうっとする。
頭が重い。
…というか、頭が痛い。

「風邪かぁ?阿部」
教室で栄口が近寄ってくる。
今日の授業中ずっと机に突っ伏してりゃ、そりゃそうも言われるだろう。
「うずくまって、頭抱えちゃって、眉間に皺寄せてさ」
「…」
俺、はたから見たらそんなんなのか。
その軽口に答えるのも鬱陶しく、うーとだけ唸って窓の外を見る。
…外は雨。
あぁ鬱陶しい。

頭痛には理由があるんだ。
その理由をどうにかすりゃ、頭痛なんて一発で治るんだけど。
それが、どうしてもこうしても
自分ひとりの力ではなんとかできない。

「――え?何?」
うわの空でいると、栄口が話している内容が頭に入ってこない。
思わず聞きなおす。
「だから」
呆れた顔で栄口が言う。
「榛名サンに会ったんだよ、この間」
「…」

栄口が言っている言葉の意味を理解するのに、時間がかかる。
「で、それが」
「隆也はゲンキかって」
「−…」
「桐青の試合の話、してさ。ちょっとだけだけど」

くだらねぇこと言いやがってと思いながらふと、
三橋はその場にいたんだろうかと思う。
どうしてそんなことを思ったのか、自分でもわからない。

「…どこで会ったわけ?」
「帰り。三橋と図書館に行って、
家に帰るとちゅう」
「…」
予感的中だな、俺…
「…で?どうだった?」
自分でも意識せず不穏な声が出る。
「え?いや、当たり障りなく帰ってったよ。お互いがんばろーなっつって」
「いや、そうじゃなくて…」
三橋の方だよ。
そう言いかけて、口をつぐむ。
どうせ、あん時みたいに榛名に話しかけられて、
感動して目を輝かしていたに違いない。

で、俺なんでこんなイライラすんだろ。

「そうじゃなくて、なんだよ?」
「…ごめ。なんでもない」

再び机に突っ伏したのは、それ以上話したくなかったから。
それを悟る栄口の勘の良さに、俺は感謝する。
栄口が去った後も、なんとなく消化しきれない気持ちで頭を抱える。

…あぁ。
頭が痛い。
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