□プロローグ
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そうだ。
初め俺は、俺の野球ができればそれでよかったわけで。
結局のところ、投手なんて多分、
誰でもよかったんだ。

それで、――三橋を迎えて――
初めての試合が終わって――
眠ってしまった三橋の肩を担いで、
その重さに、その「信頼」の重さに、俺は――痺れた。

それで、それから―

『プロローグ』

目で追う。
追ってしまう。

9組はサッカーらしい。
窓からのぞくと、グラウンドに田島の飛び回る姿が見える。
その横で、なんだかモタモタと動く小さな身体。
茶色い髪で、三橋だと知る。

あ、田島の奴あっという間にシュート入れた。
で、三橋は何やってんだよ。顔でボール受けちゃダメだろ。

くくく、と笑いが零れる。変な顔してるなアイツ。馬鹿だろ。

俺は変だ。

信頼されるっていいもんでしょ?

モモカンに言われてから、で、少しづつ自分でもそう思い始めてから、
それに納得しているような、
それでもなんだか思うままにならない気持ちがある。

「阿部」
「…!花井」
「何見てンの?9組か」

一瞬、ドキッとする。
なぜか、やましいことを見られたかのような、そんな気持ちになる。

いつの間にか花井がそばに立っていて、
窓をみやる。
「ああ、たまたま見てたら、9組がやっててよ」
「ゲンキだな、あいつらは」
「三橋が顔でボール受けた」
「はぁ?…馬鹿だなー」

再度窓を見ると、もう時間が終わってそれぞれ解散し始めている。
思うままにならない気持ち。

――もっと。
もっと、信頼、されたい。
もっと、近くで。
もっと、強烈に。


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