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□重吾分裂日記〜呪印夜話〜
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「折角、重吾(オマエ)と分かれられたってのに、暴れらんねぇし、つまんねぇ!」


低くドスの効いた声が室内に響く。
それが自分の半身の声だと思うと、重吾はげんなりした。

いつもの殺戮衝動時は、自分がそうなっているから余り気にならなかった(気にする余裕が無かった)が、こう客観的にそれを見れる立場になってみれば、何とも滑稽にさえ見える。
自分で言うのもなんだが、粗野で粗雑で粗暴粗悪、見れば見るほど品が無い、落ち着きが無い。
喚き散らして、力を誇示するだけの存在。
自分の半身ながら、何とも子供っぽい。
それが可愛らしい本当の子供ならいざ知らず、これほど巨体の男では全く笑えない。


重吾は半ば呆れながら、今の状況を省みてみた。

原因は良く解らないが、朝目が覚めたら二人は分裂していた。
通常時の重吾と、殺戮衝動に駆られた呪印の呪吾。
分裂した重吾は、完全に呪印の能力を失っていて、普通の人間になっていた。

ただ、忍としての能力を失効していなかったのは幸いだ、と重吾は胸を撫で下ろす。
重吾にとって、殺戮衝動時の自分は恐怖の対象であり、しかし力の根元だ。
能力を失うと言うことは、自分の存在理由を無くすにも等しい事だった。

この小隊に誘われたのも呪印の力が有ってこそ。
重吾にとって、呪印は恐怖でありながらも、自分と言う存在を証明する為に必要不可欠となっていた。



「もう少し静かに出来ないのか?」

どこか苛々とした思いで、喚き散らす呪吾を見る。

サスケのお陰で呪吾が暴れる事を阻止し、部屋に留められたが、その分欲求不満らしい。
殺戮衝動なんて、暴力の塊の様なモノを抑え込めば、当然と言えば当然の結果だった。



「静かにだぁ?
んな事無理だってのは、お前が一番知ってる筈だぜ?」

部屋の窓際に腰かけていた重吾の前に近付き、どこぞの不良の様に座り込むと、呪吾は重吾の顔を覗き込んだ。
不自然な色をした目には感情が見えない。
殺戮衝動そのものである呪吾に、それが有るのかは、些か謎ではあるのだが。

そんな事を思いながら、重吾もまた感情を映やさない目で見詰めた。


「それでも、だ」


「………そうだな。
じゃあ、もっと楽しい事、しようぜ」

暫し沈黙した後、ニタリと呪吾が笑った。

ゾワリと重吾の背に悪寒が走る。
こんな表情の呪吾がろくな事を考えている訳が無いのだ。


「楽しい、事……?」

訝しげに眉を潜めた重吾。
それにも構わず、呪吾はただでさえ迫っていた二人の距離を詰め、座り込んでいる重吾を閉じ込める様に壁に腕を着く。


「セックスしようぜ」






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