脱色駄文

□喪家の狗
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手探り、求めたのは、ただ、主の温もり。
耳をすませ、欲したのは、ただ、主の声。


無くしたのは、亡くしたのは、喪くしたのは……貴方と言う存在。


だから、狂うのです。


もう一度、もう一度、ただ一度。
それだけで構わない。
もう一度、もう一度。
ただの一度で良いから。

あの温もりを……声を……
取り戻したいと思った。

それは宛ら、喪家の狗。

忠節を尽くしたモノはもう居ない。
忠節を尽くすべきモノはもう居ない。

喪家の狗は……
無くした、亡くした、喪くしたモノを乞い、焦がれ。
そして、無様に喘ぎながら、のたうちながら、それでも求めるのです。

きっと、まだ……
諦めるなど、出来はしないのです。
この心は、身体は、脳は……
まだ、貴方という存在を覚えている。

きっと、これからも……
忘れなどしない。


貴方は私の絶対でした。


愛しい、愛しい、我が主。
貴方の為なら、狂う事さえ厭わ無い。

だから……
もう一度だけ……


求めた腕は空を切り、掻き抱いたのは……

ただ空虚のみだった。



END.
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