脱色駄文

□血塗れ児戯
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思い切り舌に噛み付かれた。
自分のモノ以外の歯が、深く舌を抉る感覚にビクリと震えが走る。

舌裏の血管は無惨にもザックリと喰い千切られ、口腔内は大量の血で溢れかえり、鉄の味が味覚を占領する。
白い服は、僕の血で赤く濡れていった。
何とか繋がっている舌が、まだ幸いだ。


「っは……あふ、ふはっ」


意味を成さず、音に成り果てる僕の声。
呆れる程に僕は無力だ。

強烈な痛みを堪える為か、苦しい息を整える為か、僕の口からは否応無しに音が漏れだす。


「はっ、ふぅ……っつ」


「黙れ!!」


ハフハフと、声に為らない音を発し続けていれば、貴方の反感を買ったらしく、思い切り殴られた。
バキッ、と言う音と共に、僕はベッドへと叩き付けられる。



「っふ!!」

ボタボタと口から垂れる血が、シーツにまで飛散した。

それにも構わず、貴方は僕の服を脱がし始める。

僕は抵抗もせず、彼のされるがままになり、ゆっくりと目を閉じた。
それは経験則の様なもので、抵抗が無意味であり、寧ろその暴行を誘発すると学習してしまっていたのだ。


「……テメェは黙って抱かれてりゃ良いんだよ」


首筋に噛み付きながら、横暴な理論を振りかざす。
最早、意味が解らない。
貴方に僕が抱かれる理由、貴方が僕を抱く理由。

ピリと皮膚に歯の食い込む感覚が有った。
つっ、と血が伝うのが解る。
佳くもこう次々に傷を作っていく方だ。


「……ふぁ、っう」


この行為に意味は無い。
無い筈なのだ。
強いて意味を持たせるのならば、ストレス発散法の一つ。
一方的で傲慢なそれ。
残忍で愚かで自己史上主義なゲーム。

甲虫の足を削ぐ様な、蛙の息を塞いでやる様な、それを愉快的に虐げるその行為。



「っ、つっ……!?」


いきなり足を開かれたと思うと、慣らしもしないソコに彼が埋め込まれた。
何の前触れも無い挿入は、苦痛しか伴わず、僕は局部の裂けた激痛に目を白黒させる。


それでも、僕は声を殺す。
殺さなければ、これ以上の暴行を受ける破目になる。
それだけは嫌だ。
だから仕方無しに、口を両手で押さえ付け、血塗れになりながら、痛みに耐える。


「くそっ……」

何に苛ついたのか、貴方が吐き捨た。
自分が立場を振りかざして僕を無理矢理抱いている癖に勝手だなと思っていれば、髪を無理矢理掴まれた。

「っん!……」

また、ボタボタと血が垂れる。
シーツが更に赤く染まる。
あぁ、なんて痛々しい……

何処か冷めた僕は、髪を掴まれた痛みも、舌の痛みも、貴方と繋がっている処の痛みすら忘れて貴方を見つめた。
この人は本当に一体何がしたいんだ?
半分は侮蔑を込めた瞳で貴方を見た。

「気に食わねぇんだよ……!」

バキッ

解り易い効果音と共に、容赦なく頬を殴られた。
あぁ、明日腫れ上がる事は確実だな。
どうせザエルアポロ様に治されているのだろうけど。
自業自得、なのだろうか?

「……っは、ふぇ」

「口を開くんじゃねぇ!」

ドゴッ

今度は逆の頬を殴られる。
貴方が殴るから音が漏れ出るのだというのに、そんな理不尽な拳を振るわれても僕にはどうしようも無い。
そろそろ出血も致死量に達してきたし、目眩の様に意識がブレていく。

「はぁ、っん……あふ……」


(あぁ、もう持たない……)


そして、僕はまた貴方と言う凶刃に倒れる他無いのだ。














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