脱色駄文
□鳴かぬ蛍が身を焦がす
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アイツの笑顔はお上品だと思う。
落ち着いていて、朧気で、柔らかい。
何時も気付くと笑っていて、時々それにイラつくんだ。
俺が何を命令しようと答えは決まって、笑顔で「はい」。
解り易く単調。
何度やっても変わらない返事は、最早無反応と同じ意味合いしか持ち得ない。
お前に何を問いかけたとしても、俺への言葉が出てこない。
形式ばっていて、本心を見せない言葉ばかりを反芻する。
「テメェ、何考えてやがる?」
にこやかに、脇に控えているだけのお前に問いかければ、やはり何時もと同じ言葉を吐くのだ。
「貴方の事を考えていました」
変わり映えの無い、幾度と無く聞いた、マニュアルじみた言葉。
これは愛の告白などでは無く、拒絶の言葉に他ならない。
こんなにも淡々と語られる愛などあってたまるか!
「俺の『何』をだ?」
イラついた口調で問い直すと、テスラは少し困った様な笑顔で……
結局、笑ってんだ。
「貴方の全てを」
困った笑顔のままで発せられた言葉は嘘臭くて、尚イライラする。
「そうか、よっ!」
「ぐっ……!!」
だから、勢い良く床に叩き付けた。
顔面から床に這いつくばらせる。
「暫く床とヨロシクやっとけ」
それだけ吐き捨てると、俺は自宮を後にした。
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