お仕置き部屋

□愛のムチ?
1ページ/6ページ

俺の両親は総悟を生んで自動車事故ですぐ亡くなった。

勿論俺もショックが大きかったが、まだ何も分かっていないほんの赤子だった総悟をみて、こいつは俺が守ると心に決めた。
親戚は、総悟を引き取ることを申し出たが、せっかくできた弟と離れて暮らすなんてどうしても嫌だった。
それから、まだ中学を卒業したばかりだった俺は友達と遊んだりせずに学校が終わるとすぐ総悟を保育園まで迎えにいき、総悟の世話をするようになった。
総悟は、段々と成長するに連れてべったりと俺の後をくっついて離れなくなり、俺もそんな総悟が可愛くて、両親がいないことで寂しい思いはさせたくないと、多少のわがままは許して甘やかして育ててきた。きっと叱ったことなどほとんどない。


「総悟の迎えに来ました。」
いつものように幼稚園に総悟を迎えにいくと、総悟の所属しているたんぽぽ組の担任である、銀髪の先生から呼び止められた。
今時珍しい男の保母さんで園児たちに慕われているようだ。総悟もよく嬉しそうにこの先生の話をするのだ。

「あのーお宅、総悟くんのお兄さんですよねー?」
銀髪でけだるそうな声を出すこの先生は確か総悟の担任の…
「はい、そうですが。」
「ちょっと話あるんだけどいいかー?」
そういって俺は、職員室に呼び出された。

「実は今日な総悟が山崎と喧嘩しててなー。ガキの喧嘩に口だすのもアレだと思ってしばらくみてたんだけどよー。喧嘩っていうより総悟一方的に殴ってる感じだったんだよな。見かねて止めたんだけどよ。」
「総悟が…ですか?何かの間違いじゃ!」
信じられなかった。普段あんなに穏やかな子が人を叩くなんて。
「いや、しかも今日がはじめてじゃないんだよなー。家では、お宅、総悟に手上げたりとかすんの?」
俺は正直総悟に過保護と言われるほど甘かった。可愛くて仕方ないから、手をあげるなんて絶対出来ないし、叱ったこともほとんどない。

「叩いたことなんて一度もないです、叱ったことだって!だから総悟はそんなことしないと…」

銀八先生は、なるほどなという顔をしてため息をついた。

「そりゃあ、無理ねーわ。叩かれたことなけりゃ、人の痛みなんて分かるわけねぇもんな。」
「そんな…」
「あいつには、痛みがわかんねぇんだよ。だから平気で人を傷つけちまう。言っとくけどな、可愛がって甘やかすだけが愛情じゃねーんだぞ?本当にあいつのこと可愛いなら、間違ったことした時はちゃんと叱ってやんのが親の愛情ってもんだろーが?」
「……………」
俺は、何も言えなかった。自分が間違っていたと思い知らされたからだ。この先生は、ボーッとしていて死んだ魚のような目をしていながら鋭い観察力を持っている。
「まあ、出来るだけ手は上げない方がいいけどなー。無理にとは言わねぇよ。少しずつでもいいから、総悟に正面から向き合って、そういう接し方をしてやれ。そうすりゃ、自然に分かってくれるさ。子供ってのはそういうもんだ。」
「……はい。」
俺は帰ったらちゃんと総悟と話をしようと決めた。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ