A la carte

□最後の恋の始め方
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意識を取り戻すと、腕の中に他人の感触。


すべすべと手触りの良いそれは、ゆうべ飲み過ぎて誰かを連れ帰ってしまったからだと、簡単に答えが導き出せる。

それにしても気持ち良い手触りだ。

枕になってる腕を跨ぐようにある頭は布団にすっぽりと覆われていて、誰だか窺えない。
自由なもう一方の手で、身体のラインをなぞってみると、随分細いコだなぁと思う。
こちらに後ろ向きでぴったりくっつくコの腹は、かなり薄い。
ゆうべは誰と一緒にいたっけ、とまどろみから醒めやらぬ頭を抱えながら鳩尾を辿って胸の外周をそっとなぞると、これまたささやかな‥‥失礼、可愛いらしい膨らみ。
また下に手を戻し、下腹のその先は、薄いのか‥‥生え揃っていないのか、薄い茂み。
勿論、骨が細いのだから腰も細い。
こんな細腰でオレのを受け入れたのかと、少し気の毒に思う。
くびれなんて、両手が余ってしまうんじゃないか。

オレが素肌を撫で回してるからか、相手の目が覚め始めてる。

寝起きの一言はなんだろうと心構えをする為、目を開いて布団の中の彼女の顔を――――




「――サ‥‥、クラ―――」





呆然と自分の過ちから立ち直れないオレを余所に、目覚めたサクラは、何事もなかったかのように時間を確認し、遅刻だと小さく叫んであっという間に「先生、またね」と言ってオレの部屋から出て行ってしまった。

その歩き方のおかしさからシーツを見ると、


(―――やっちゃった‥‥‥)


赤い軌跡が、夕べの熱演を忠実に描いていた。



14歳も離れている、部下で、教え子の女の子を、酔ってたとはいえ手込めてしまったショックは、意外にも本人からのフォローによって救われた。

『先生酔ってたし。どうせ任務で初めてを経験するんだもの。私は知らない人より、カカシ先生で良かったのかも』

あっけらかんと当人に言われても、くの一の破瓜は任務で条件に入ることを充分に知ってるオレは、上師としても教師としても忍としても失格者だ。
が、火影様に報告に行ったところ、特にお咎めもなく、淡々と二度とないように釘を刺されただけだった。

サクラに充分な謝罪と詫びをさせてもらうと、あとは今まで通りの関係に戻ることができた。
が、それはサクラが受け入れてくれたおかげだからで、オレとしては内心サクラに頭が上がらない。

それからカカシ班として、いくつか任務を受けたが、サクラは変わらない。
あまりの変わらなさに夢だったんじゃないかと疑問に感じ始めた頃、岩場で足を踏み外してよろけたサクラを後ろから支えてやると、彼女から少しの反発を感じた。

ほんの少し身体が跳ねただけだったが、オレの手には支えた時の華奢な肩の感触がいつまでも熱く残った。




(ねぇ、サクラはオレで、オレの手で、‥‥‥どんなふうに啼いたの――?)


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