A la carte
□熱融解
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ぬるりと擦り合わせ、吸い付いた口唇を小さな音を立てて離すと、見開いた目をこちらに向けていた。
暑さと相俟って上気した頬に罪悪感が喚起され、未だ呆然としている彼女に口八丁で丸め込み、逃げるように帰宅した。
室内に入っても、じりじりと焦げ付く暑さは変わらなかった。
むしろ締め切っていたせいで、空気が篭ってサウナのようだ。
陽はとうに傾いて、薄闇が迫る時間。
なのに汗は止まらず、いっそう吹き出し流れ落ちる。
暑い。
頭が茹だって溶けそうだ。
鎖帷子と肌の間を流れる汗が不愉快で、湿った服を破る勢いで脱ぎ捨て、帷子を外さないまま頭から水を浴びると、漸く思考が戻ってきた。
見守る気持ちで可愛がっていた筈の部下に
――オレは、何をした
冷たい水を被っても、下腹に熱が燻ったまま、鎮まる気配はない。
20130810