A la carte

□熱融解
1ページ/1ページ




ぬるりと擦り合わせ、吸い付いた口唇を小さな音を立てて離すと、見開いた目をこちらに向けていた。
暑さと相俟って上気した頬に罪悪感が喚起され、未だ呆然としている彼女に口八丁で丸め込み、逃げるように帰宅した。

室内に入っても、じりじりと焦げ付く暑さは変わらなかった。
むしろ締め切っていたせいで、空気が篭ってサウナのようだ。
陽はとうに傾いて、薄闇が迫る時間。
なのに汗は止まらず、いっそう吹き出し流れ落ちる。

暑い。
頭が茹だって溶けそうだ。

鎖帷子と肌の間を流れる汗が不愉快で、湿った服を破る勢いで脱ぎ捨て、帷子を外さないまま頭から水を浴びると、漸く思考が戻ってきた。

見守る気持ちで可愛がっていた筈の部下に

――オレは、何をした


冷たい水を被っても、下腹に熱が燻ったまま、鎮まる気配はない。


20130810


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ