A la carte

□反逆レクイエム
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その日の先生は、私の表面をなぞるばかりで、全然気持ち良くなかった。
手を抜いてるワケじゃない。
私の反応をガン無視してマニュアル的に肌を撫でてるだけなのだ。

そんなんで高まるハズもない。
気分も下降するばかりだった。

折り曲げていた膝で、カカシ先生を押し退けた。

「あれ、え? サクラ?」

私の躰を辿っていた顔を上げて、不思議そうに傾げる。
‥‥うん、三十男にソレをされても可愛くないわ。

「先生、今日気持ち良くない」

「体調悪い?」

「先生が、」

「オレ?」

ああ、噛み合わない。
先生の気が散ってるせいでグダグダなのに、本人は解ってないし!
もう!

苛っとした顔をしないように引き攣りそうな口許を宥めつつ、仰臥してた身体を起こして寝台の上に二人で向かい合わせになると、私から口唇を合わせる。

「私を触りながら、私以外を考えないで」

引き出した舌を噛みながら言うと、素直に謝られた。
‥‥謝るってことは、認めるってことじゃないかと、余計に不機嫌を煽られるじゃないの。

「悪いって思う?」

「ん」

「じゃあ罰として、これから私に触っちゃダメよ」

「サクラに触れないの?」

「今日だけよ」

乱された上衣を直す私にピリッと感を察したか、カカシ先生は案外あっさり了承してくれる。

今日という日付に上の空な理由は、訊いたことないけど当然で。
けど、慣れで私を触ってた罰は、受けてもらうわ。
私は抱き枕でも、カカシ先生を甘やかす商売女でもないんだから。

余所事に気を取られながらの行為が何より嫌いな私は、欲張りだと思う。
それが初恋から来るトラウマだとカカシ先生は解っているのに、あっさりと『今日』に負けて、悔しかったのだ。
四六時中好きだの私だけを見ろだなんて、言えない代わりに。
いろんな事を考えたりしなきゃいけない先生と、肌を重ね合わせるひと時だけ、独占したい、されたいっていうのは贅沢なのかな?

だから先生。
『今日』だって譲れないわ。
譲ってなんか、あげないんだから。

向かい合わせのまま、上半身をカカシ先生にぴたりとくっつけて口吻けを深くしていく。
額あてを解き、ベストを腕をなぞりながら脱がす。
上顎をゆっくり擽れば、吐息が漏れた。

「先生、上、脱いで」

少し口唇を離して言うと、付着した唾液を舐め取る舌がやらしい。
脱ぐ為にくっついてた身体を離すと、上から引っ張り抜くように脱いでくれる。
同時に、私も先生の脚衣を緩め、下着ごと抜き去った。

現れた先生のはさほど勃ち上がってなくて、水平よりやや下でぷるぷるしていて可愛らしい。

構わず腰に腕を回し引き寄せ、もう一度ぴたりとくっつくと、素肌のカカシ先生は小さく身じろいだ。
カカシ先生の口唇を食べちゃうみたいに重ね、腰から背筋をすうっとなぞり上げれば、それは可愛いらしく震える。
何度か繰り返し辿ると、堪えきれないといったふうに呻き声が上がる。

「背中、性感帯だったのね、先生」

背骨を辿っていた指を脇へ逸らすと、等間隔に4本の引っ掻き傷。

「痛かった?」

「サクラが付けた傷だ。痛くないよ」

「夢中だったの」

「気持ち良かったんでショ。嬉しいよ」

「今日は全然気持ち良くなかったわ」

「うん」

「もうそういう風にしてほしくないの。だから、カカシ先生、お仕置き‥‥しちゃうね」

泣いちゃうくらい、と軽く触れ合ってた口唇を耳へずらし、耳殻を舌先で舐め上げると、怖いな、と返ってきた。
そうよ、女の子を怒らせると、怖いんだから!

カカシ先生の上の空な理由が、私が踏み込んじゃいけない領域なんだもの。
掘り返して問い質しちゃダメ。
先生の今日の追憶に触れちゃダメなの。
だからね、『何を思い出してるの?』の問いの代わりに。
私のエゴイズムを受け取ってもらいたいの。

耳殻だけじゃなく、耳孔や耳の後ろも息を吹きかけるように嬲ると、触ってもいないのにカカシ先生のは重力に逆らって勃ち上がる。
(わなな)く度にぷるぷる震えるソレは、まるで異生物のようでとても憐れな生き物のように映る。

もっと震えたら、愛おしくてたまらないモノになるんだろうな、と、来るべき刻が待ち遠しく、にんまりと口角が上がるのを自覚した。

「ねえ先生。そこの壁に手をついて下さい」

枕元の壁を見遣り促すと、カカシ先生はゆっくり私に背中を向ける。

「お尻をこっちに‥‥そう、軽くでいいです」

くの字になるように姿勢を整えてもらうと、そっと腰骨を撫でる。

「サクラ?」

お尻ら辺を撫でる私に、きっと、カカシ先生は恐れてる。
尾骨の下とあわいの間を内側になぞると、お尻の筋肉がびくりと引き攣った。
先生の反応が可愛らしくて、先生が私の手の中だってことに堪らなく気分が高揚していく。
揉み解すように、両手を使ってお尻全体をマッサージしていくと、緊張していた筋肉から徐々に力を抜いてくれた。
内股へ手を滑らせれば、引き攣る腿に揺られるお尻がわずかに震えて、カカシ先生の戸惑いが伝わってくるようだ。

なにか滑るもの‥‥と探して目に入ったのは、任務で乾燥しがちな私がカカシ先生のお家に置かせてもらってる、ボディ用クリーム。
ジェルとクリームの中間なそれは、全体的にねっとりとしているけど、薄く馴染ませるとさらりとした手触りに変わる。
買ったばかりでたっぷりあるそれを多めに掬い、掌で温度を馴染ませる。
温くなるまで先生の背中を唇で嬲っていると、前ではカカシ先生のソレが先程より首を擡(もた)げて震えていた。
ソレは、腰骨とお尻の間を跡が付くくらい強めに吸うと、ぷるりと震えてまた首を伸ばす。

(可愛い‥‥)

食べちゃいたい。
いっぱいキスして嘗めて、啣えて吸って扱いて、喉の奥でも吸い上げるの。

でも今日はしない。

代わりにこっちを可愛いがるの。

柑橘系の香りをまとった指をあわいに馴染ませ、ゆっくり円を描くように撫で摩る。

「サ、クラ‥‥そっち?」

「うん。でも、安心して。指しか入れないわ。だから先生‥‥」

少し、いきんで。
そう囁いた私を振り返ろうとするけど、させないように指に力を入れた。

「待ッ‥‥ぁ、ゆっくり‥‥」

先生が息を整えている間に、後ろから耳を嬲る。
吸って
吐いて
吸って

タイミングを計って指先をほんの少し潜り込ませる。

「は、あッ」

わ、先生、その溜め息、ゾクっとしたわ。
抜けるような発声がいつもより高くて‥‥さっきよりも細かく震えてる。

「少し、早かった?」

「ン‥‥大丈夫だ‥‥」

第一関節までも入っていない指はそのままに、他の指を入口に添えてゆっくりなぞる。

「ゆっくりするから、さっきみたいに息をして?」

排出する為の器官に異物が挿る違和感は、なかなか悍(おぞ)ましいものがあるだろう。
先程よりも不器用に息を継ぐカカシ先生を宥めるように、口唇で肩を愛撫してゆく。

そうしてゆっくり躰を馴染ませ、指が二本、カカシ先生のナカで自由になる頃、漸く指をぐるりと回す。

「ひ、‥‥あぅッ」

それまで縦方向でしかなかった動きに、予想していなかったカカシ先生は盛大に啼いてくれた。
そして見付けた、瘤。

「あ、ダメ‥‥だ、サクラ、ぅ、動かさ‥‥ぁぁっ」

懇願するカカシ先生に、私は内心で快哉を上げた。
身体の関係を持ち、恋人になってから数年、初めてこの男性(ヒト)の乱れる姿をこの手で拝めるのだ。
否応なく高揚する気分を必死で捩伏せ、柔らかく気を付けながら瘤の周囲を撫で摩る。

「フ‥‥んンッ、‥‥ンッ」

「セーンセ、唇噛んじゃダメよ」

「あぅッ、ハ、サク‥‥あぁッ」

噛み締めていた口唇に指を突っ込み、瘤を強めに押すと、背は呆気なく反り、解放された口唇から啜り泣きのような吐息が間断なく続く。
それでいい、というように口唇を撫でてあげると、舌が私の指を擽った。

「先生、私の指気に入ったのね」

いつしかカカシ先生の前の滾りは涎を垂ら垂らと零していた。
‥‥おかしいな、普通、指を後ろに挿れてる時って、意識がそっちへ向くから前の粘液は分泌されにくい筈なんだけど。
もしかして。

「カカシ先生って、お尻だけできもちよくなれるのね。‥‥先生のココ、開発済みなんだ‥‥」

私の呟きに身を震わすだなんて、イエスと一緒だわ。
含ませてる指を吸い上げるだなんて、しっかり教育されたんだ。
『誰に』だなんて愚問ね。
訊く気も起きやしない。
私の指なんかじゃ物足りないんじゃないかしら。

私の指の動きに応えるようにお尻を突き出してダンスを踊るカカシ先生は、とても滑稽で可愛らしい。
ダンスに合わせて踊り震えるソレは糸を引きながら、悦びを私に主張し、撒き散らされる先走りは支えなくても重力に逆らい、粘る薄白い絲を撒き散らす。
勃っていても勃ちきらないそれを握って支えるのもいいけど、私の指だけでイってほしかった。

「サ‥‥クラ、‥‥サクラぁ、う、さわっ、ハ‥‥っああ」

カカシ先生の喘ぎ声に煽られて、挿入してる指を激しく責め立てたい気持ちになるけど、ぐっと堪えてゆっくりマッサージするように押し摩る。
近くを通る尿道の位置も確認済みで、カカシ先生の絶頂をある程度コントロールできるはずだ。

先走りを撒き散らすワレメを思いきり吸い上げたいなあ。
ぶら下がる双袋も腫れ上がって、皮の皺がのびてぷらぷら私の目を惑わす。
コレ、ぱくっと食んで口蓋で転がしたら、もっと震えてくれるかしら。
ああ、そうしたらすぐ出しちゃうわよね。
今日は後ろだけ、って決めてるんだから、ダメ。
吐息だけで笑って、背中に口吻けを贈る。
ついでに肩甲骨の出っ張りを甘噛みしておく。

「また明日、ね‥‥?」

カカシ先生の痴態に煽られて、私の脚の間も、充分潤んでいる。
本当は先生に触ってほしい。
舐めて、その熱い滾りを納めて融け合いたい。
けど、私の中の冷静な部分がそれらを拒否していた。

故人を偲ぶななんて言わない。
私の強烈な独占欲と我が儘。
こんなこと、恥ずかしくって言えやしないわ。
好きなのに、八つ当たりでカカシ先生を辱める自分が情けなくって、憤りを簡単に行動に現す自分がとても卑屈だと思った。

「さあ、先生。イきましょうか」

瘤をぐりぐり押さえながら親指で双袋の付け根を押し、尿道を少し強めに引っ掻く。

「や、あッ、ぁぁあ‥‥っっ」

眦を紅く染め、口端から透明な雫を零して壁に縋り付くその姿は、きゅっと反った背と相俟ってとても色っぽかった。


20130125


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