OTHERS(カカガイ以外)

□door
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「今度はあなたなの? ガイ」





紅が、風になびく髪を押さえながら笑う。








「“今度は”?」



紅の言葉を 俺は聞き返した。




「さっきまで シカマルが一緒だったの。

家まで送るってきかなかったけど 途中でチョウジに呼ばれて行ったわ」



ふふ、と紅は笑った。





「元気そうだな」



俺は笑顔の紅を見て 心底 ホッとした。











  <door>










お互いの葛藤を打ち明け合った時から

俺たちには 秘密が出来た。






紅が心の奥底にしまっていた葛藤と

俺が 誰にも言えずにいる 葛藤、




誰にも秘していた事を打ち明け合った事で 

奇妙な信頼のようなものが 紅に対して芽生えた。






「今日はどうした? 病院か?」


「ええ。定期健診よ」



紅が 腹をさすりながら答えた。



「そうか。問題は?」



「問題ナシ。

順調ですって。」




「なによりだ」





紅の話を聞きながら一緒に歩いた。





紅の大きく膨らんだ腹には アスマの子供が宿っている。




もう、アスマはいないのに。





とても 不思議な気持ちだ。







アスマの血をひく子供は どんどん育っていって

いつか紅の胎内から出てきて 成長し

俺の前に立って俺を呼ぶのだ。






「ガイ先生・・・?

ガイおじさん、か?」



「?

なぁに?

どうしたの ガイ」



つい ぶつぶつと考え込んでしまった俺の顔を 紅が覗き込む。




「ああ、いや。

お前の子供が 大きくなったら俺の事をなんて呼ぶんだろうかと思ってな。」




紅はあきれたように溜息交じりになった。




「まだまだ先の事よ。

男って気が早いわ。

シカマルも 

“俺は この子の師になって アスマに教えられた事を 今度は俺が伝えるんだ”、

って言ってるの

一体何年後の話?


私は数カ月後の出産を考えただけで 気が遠くなりそうなのに」



結局は ヒトゴトなのよね。


紅は 言いながら自分の腹をさすった。






「他人事だなどと!! 俺たちは誰もそう思っていないぞ」



俺は 足を止めた。



先に歩いていた紅も 立ち止って 俺を振りむいた。




「・・・ありがとう」






さわさわ・・・


また 紅の髪が 風に靡く。




幻術使い特有の紅い目が 黒い髪に見え隠れする。



カカシの左目も 同じように 紅い。


最近 会っていないカカシを思った。





「今日は風が強いな。

体が冷えたらいかん。


早く戻ったほうがいい。

どこか寄る予定はあるか?」



「買い物を少し」


「付き合おう」



「大丈夫よ、そんなに買い込むつもりもないし」



「この機会に 重い物を買っておけばいい。

なんでも運ぶぞ 遠慮するな」




困ったような顔をして 紅は笑った。





「じゃあ、お願いしようかしら。」
















「なんだか 妙な感じよ」



そう言いながら 紅は先に部屋に上がる。



俺も後に続いて 荷物を持って 紅の部屋に入る。



仕舞うのはあとでゆっくりするわ、と 荷物の片付けはやんわりと断られた。





「皆が異様に親切なの。

ありがたいけど 居心地が悪い事もあるわ」








「親切には素直に甘えておけばいい

大事な仲間の嫁さんだ

そりゃあ 親切にもするさ」




「“嫁さん”ね」





紅は小さく呟いた。




「ガイ。 コーヒーでいい?」


「ああ。すまん」



俺は 紅の部屋の椅子に腰掛けた。




「ノンカフェインのコーヒーだけどいい?」



「???」


紅の言葉の意味がよくわからず俺は首をかしげた。



「妊婦はカフェイン取っちゃダメだっていうから。

でも コーヒー飲みたい時もあるじゃない。

そうしたら ノンカフェインのインスタントコーヒー見つけたの

結構おいしいのよ」





「・・・妊婦ってのは 大変なんだな」



俺はしみじみそう思った。





わざわざ言わなければカフェインの有無など自分では気付かないコーヒーをすすりながら
紅の部屋を見回した。



部屋の隅には 出産に備えてだろう、小さな箱や袋が置いてあった。



「ここでずっとやっていくのか?」



「ええ。 いまのところ その予定」



紅は 俺の正面に座って カップを持ち上げる。





猿飛家とは どういった状態なんだろう。


紅には 実家はあるのだろうか。


俺やカカシのように 親はすでにいないのだろうか。







「あなたは? ガイ」


カップの上から 上目遣いの眼だけが見える。



「ずっと カカシと今のまま?」



ブホッ


思いがけない紅の言葉に 飲みかけのコーヒーが気管に入った。



「ごほ ごほっ」



盛大にテーブルの上にコーヒーを撒き散らしながらむせた。













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