稲妻11

□過去、親友=現在、―
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俺たちは親友だった。あの日まで。

いつも俺たちは一緒で、凄く仲が良くて、まるで兄弟みたいだと自分で思ったこともあるくらいだった。
好きだぜ、なんて言ったら俺もだ、そう返して貰えるのが嬉しくて堪らなかった。それは、そう、もしかしたら…既に求めていた証拠なのかも知れない。
友達としてではない彼を。



その時が来たのは全て、切欠を作った彼奴のせいだった。いや…せい、と言うのはおかしいんだろうか。
俺はいつものように特訓に向かう途中で聞き慣れた話し声を聞いて足を止め視線を横に移せばそこには鬼道と…風丸がいた。風丸の姿を見た瞬間胸がとくんと鳴る。俺は学校以外でも風丸と会えた喜びの余りに直ぐにでも声を掛けようと口を開いた時だ。

「風丸は円堂が好きなんじゃないのか?」
「そりゃあ、好きだぜ?親友だからな」
「…そうじゃない。」
「…?」
「恋愛感情で、だ」

鬼道の言葉に思わず動きが止まる。何だ、一体、何の…話を…?
バクバクする心臓がやけにうるさかった。何故こんなに心臓が騒ぐのかはこの時はまだわかっていなかったが、今思えば簡単だ、風丸の答えに期待と不安を抱いていたから。
好きだ、と言って欲しい。嫌いだ、なんて言わないで。そんな想いが入り混じっていた。
そして風丸は―…

「円堂を好きだなんてっ…一度も思ったことない…」
「…ふぅん?」

俺は呆然として二人の会話を聞いていることしか出来なかった。聞いてはいけないものを聞いてしまった、そう思ってその場を離れようとしたけど足が動いてくれなかった。嫌だ、もうこの場にいたくない。
ちらりと鬼道の視線がこちらに向いた、確かに俺を見た、目の端でしっかり捉えていた、その直後鬼道は風丸の身体をいきなり抱き締めた

「なら、風丸…俺と…」

鬼道は優しく囁きかけるような声で風丸に言う。俺が見ているのを、知っているのに。風丸は動かない、何も言わない。…受け入れるのか?鬼道を…。
俺は心の中がぐちゃぐちゃだった、何でかわからないけど思い切り泣いてしまいたくて、鬼道を殴ってやりたくて、風丸に問い質したくて、でも何も出来なかった。
そんな時ふと風丸の視線が俺に向いてぼんやりと焦点が合っていなかった目が丸くなり酷く吃驚した顔をして、慌てたように鬼道を突き放した。

「円、堂…いつから…」
「………」

俺は何も言えなかった。ただ戸惑いの表情を見せる風丸を見ていることしか出来なかった。
そんな時、鬼道の手がすっと伸びまた風丸の体を後ろから抱き締める。

「気にすることない、お前は、円堂の事が好きな訳じゃないんだから」
「違っ…」
「違わないだろう?自分で言ったんだ」

鬼道の言葉がどんどん俺を追い詰めていく。でも…、でも、

諦めたくないんだ

気付いた時、俺は鬼道の手を薙ぎ払って風丸を自分の腕の中に引き寄せていた。触れ合うことはあっても抱き締めることなんてなかった風丸の体は柔らかい匂いがして優しい温もりを感じた。それだけで勇気が出たんだ。

「風丸が、俺のこと好きじゃなくても…俺はお前が好きだ」

そう言うと風丸の肩が小さく跳ねたのがわかった。気持ち悪いと思われた?そんな奴に抱き締められているなんて嫌だと思われた?
俺は怖かった、けど言った後悔なんか無かった、だって、好きだから。

暫く、俺の体感と実際の時の流れがどれだけ違ったかはわからないけれど兎に角暫く経ってから風丸がすん、と小さく鼻を啜った。
まさか泣いてる…?慌てて体を離そうとしたら突然ぎゅっと抱き付かれた。心臓が止まりそうな程に驚いた後すぐにスピードを増してバクバク言う心臓に俺はゆっくり小さく呼吸してから名を呼んだ。

「風…丸?」
「…泣き顔なんて…見られたくない」

そう言った風丸は俺の肩に顔を埋めて息を吐き出した。そしてぎゅうっと抱き付く力が強まる
さっきから、話が見えてこない。泣くほど嫌ならば何故俺に抱き付くんだ?そんな俺の気持ちが伝わったかのように風丸は口を開いた

 
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