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□恋の呪文は
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ある日の午後のティータイム。みんな集まってまったりのんびりとしていた時だ、ブレイクが突然声を掛けてきた
「オズ君」
「なに、ブレイク」
ブレイクが話し掛けてくる時はろくなことがない気がする。イヤだなぁ、なんて胸の内では思っていてもとりあえず笑顔、笑顔。
ギルはブレイクとオレが喋ってるといつも割って入ってくるんだけど今日もそのつもりみたいで、立ち上がろうとする素振りを目の端で捉えた。と、その時ブレイクが口を開いた
「スキトキメキトキスって言ってみてください」
……は?
オレは多分変な顔をしていただろう。だって周りのみんなも突然の謎の言葉に意味がわからず変な顔をしているんだからそれを言われた当人のオレは笑えるくらいの顔のはずだ
んっと…………スキメキス?あれすっごい足りない。
「…何その呪文みたいな…」
「呪文ですヨォ」
「んん、なんか面白いこと起きるの?」
「それはもう」
にこにこと笑みを浮かべるブレイクはとっても怪しい。って言うかいつも怪しい奴だけどさ
ちらりとシャロンちゃんを見てみたけどさっきのスキト………なんとかって呪文が何なのかとぶつぶつ呟きながら首を傾げて考えていた。パンドラ関係じゃないのか…
なら別に危なくも無いんだろうしまぁいっか。
「ごめんもう一回」
「スキトキメキトキス、ですヨ」
「ええと…ス、キ、ト、キ、メ、キ、ト、キ、ス。」
「ハイ」
オレが指折り言った呪文に返事をしたブレイクはいきなり椅子から身を乗り出してずいっと顔を寄せて来たかと思えば軽い触れるだけの接吻をしてきた。
ギルが意味のわからない叫び声をあげる中、オレは口を押さえてブレイクを見る。彼はにっこりと笑っているのでオレもにっこり笑って言葉を発した
「…これ面白いこと?」
「面白くなかったカナ?」
「面白くないね」
「でも君が言ったんじゃないですカ」
「……何を?」
ブレイクの言葉に思わず暫く考え込んでしまう。オレ、何か言っただろうか。
言ったのは例の呪文くらいで決して接吻を求めたりとかはしてないはずなんだけど。
「好き、ときめきとキス。って」
「…スキトキメキトキスってそこで切るんだ…」
「ア、また言いましたネ」
ぐっと近寄って来たブレイクにやばっ、と思って体を引こうとした時ティーカップが彼の顔を目掛けて飛んできた。ブレイクはそれをサッと避けるけどそれを狙ったようにギルの腕が首を絞めるように回り無理矢理距離が離された
ついでにティーカップを投げたのは…シャロンちゃんだった。うーん、時に大胆な彼女は格好良い。
「鴉ってば、首絞まってますヨォ」
「絞めてるんだ…!!」
「オズ様、こちらを向いてください…ああ汚らわしい物を本当にすみません」
シャロンちゃんに唇をハンカチで拭われて妙にドキドキする。ああ、ち、近いよ!シャロンちゃん…!
平静を保つのに必死なオレに対して首を絞められても苦しそうにもしないブレイクが不服そうに顔を顰めてこんなことを言った。
「お嬢様、別にオズ君とキスするの初めてじゃな「うわぁああああ!!!!」
「なっ…!?」
「えっ…」
オレは精一杯誤魔化すように大声をあげたがもう、ちょっと、手遅れな感じで…
ギルは激しくショックを受けてるらしくブレイクが腕からすり抜けていくのも止められないほど呆然としている。シャロンちゃんも目をまん丸にしてオレを見てる…
と、ブレイクがオレの後ろに回ってぎゅっと抱き締めてくる。不意の出来事にびっくりするどころかオレはブレイクの温もりに僅かに安心してしまった。
「だって私たち好きときめきとキスですからネ」
「意味わからないから!離れ…」
言いかけた言葉を飲み込むしか無くなる接吻。
ちょ、人前でするようなそれじゃない、…
振り返るような体勢でしてるのが辛くて離れようとしてるのにしっかりと抱き締められてて逃れられない
ギルもシャロンちゃんも呆然としてしまっていて助けに入れないことは深い接吻にタジタジなオレにはわからなかったんだけど、そんな時不意に素早くブレイクがオレを離して後退った
何事かと思えばアリスの踵落としが先程までブレイクがいた所を空振った
「チッ……オズは私の所有物だぞ、勝手な真似をするな」
「あ、アリス…」
格好良いよアリス!ありがとうアリス!大好きだアリス!