夢月(小説L)
□その名E〜新たな手〜
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声は掠れ、体力も気力も残っていない筈なのに、銀時は歩いていた。
鞘に納まった刀を支えにして、身体を引きずるように、村外れの森の中へ。
声も涙も枯れ果て、ついに木の根に躓き、倒れ込む。
起き上がる事も出来ずに横たわった。
背中は思い出したように熱く、鈍い痛みを伴う。
虚ろな瞳は乾ききって、視界が霞む。
ぼやける頭で反芻するのは浸月の言葉だけ。
−お前も立派な侍だ。魂折るんじゃねぇぞ−銀時…いい名だな…−
「浸月…」
震える手で刀を握りしめる。
−俺に出会わなければ…浸月も−
下唇が破れそうになる程噛み締めた。