月森蓮
□先手必勝
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〜図書室にて〜
(『虹の彼方に』か…)
確か映画音楽の棚にあったのを覚えている。優しい旋律で、いかにも彼女が好きそうな曲だ。
「これか…」
図書室には飽きるほど通った時期があったから、場所を把握していた。おかげですぐに見つけることができた。
(…このくらいなら初見でできそうだな)
「月森くん?」
「え…」
名前を呼ばれ、振り返るとそこには日野が立っていた。
「あれ?月森君、今の時間帯、練習室借りてなかった?名簿に名前が書いてあったような…」
なぜ日野が俺の名前をチェックしているのか、少し気になったが、今はそれどころではない。なぜなら手にしている楽譜は…
「そうだが、楽譜を探してから行こうと思っていたところだ」
「そうだったんだ」
彼女はなんの疑いもなく理解したようだ。
「でも意外だな。月森君も映画音楽も弾くんだね」
「まぁ…どれも同じ音楽だからな。ジャンルは気にしない」
「だよね!!わたしもそう思うよ」
嬉しそうに微笑む彼女を見ると、自分は正しいことを言ったのだと安心する。
「それは?何の曲?」
彼女が俺が持っている楽譜に気付いた。
「こ、これは…」
いつもなら君には関係無いというところだが、後ろめたさがあるからか、しどろもどろになってしまう。
「教えたくないか…」
「いや、そういうわけではないが…」
「ううん、いいよ、気にしてないから」
その言葉に少し残念な気がしてならないのはなぜだろう。なんだかバレても良かったような気さえしてくる。
「ホント偶然だけど、わたしも映画音楽の曲をやろうと思ってたんだ。けど、あんまり映画音楽って聞かないからわからなくて…。オススメとかある?」
「え…?」
おかしいな…天羽さんの話では練習中だと聞いたんだが…。
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