金澤紘人

□ホワイトデー前の休日
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振り返るとそこにはバスケットボールを持った、火原と土浦が立っていた。

「本当だ。何してるんですか?こんなところで」

良かった、土浦も“こんなところ”と思ってるのか。

じゃなくて…

――マズいな

「よ、よぉ。二人揃ってどうしたんだ?」

話題を逸らそうと必死になる。

「天気が良いから公園にバスケしにいったら、偶然土浦に会ったんだ〜」

「俺は本屋の帰りに火原先輩につかまりました」

「ほぉ、そうかそうか」

「で、金やんは?」

火原が悪気のない表情で聞いてくる。


「俺は、その…」

「あっ、もしかして、ホワイトデーのお返し、買いに来たの?」

ギクッ

「俺たちも買いに来たんだよな〜土浦!」

「無理矢理連れてこられたんですけど…」

「いいじゃん、土浦も返そうと思ってたんでしょ」

学内コンクールに参加した二人は、一躍有名になったから、バレンタインもさぞもらったことだろう。

「で、金やんは何買うか決めたの?」

火原は俺の答えに期待しているようだ。

「いや…でもまぁお菓子でいいんじゃないか?」

適当に答えてみると

「最近はお菓子以外のものをあげるって雑誌に書いてましたよ」

土浦め…余計なことを言いやがって。

「そうなの?なんか難しいなぁ」

「女って面倒臭い生き物ですよ」

土浦は経験があるかのように話をしている。

「日野ちゃん…何あげたら喜ぶかなぁ」

――なんだって!?

火原からあいつの名前がでてきて驚いた。

小声のつもりだろうが、あいつの名前を聞きまちがえるわけがない。

――あいつ俺のは特別だと言ってたが、他のやつにもちゃっかり渡してたんだな。

「なんでもいいんじゃないんですか?日野なら何やっても喜びますよ」

土浦はほんとよくわかっている。

「でもさ、やっぱり喜んでもらいたいじゃん」

「俺はお菓子の詰め合わせ買いますよ」

そういうと土浦は近くにあったお菓子の詰め合わせを二つ手にした。

「あぁ、それ俺も狙ってたのに〜」

レジに向かって歩く土浦を火原は追いかけて歩いていった。

あーだこーだ言いながら、結局火原もお菓子の詰め合わせを買ったようだ。


ふぅ……一段落だな。

頼むから俺を早く帰らせてくれ。

ま、ここじゃなくても買えるからいいが。
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