若王子貴文

□恋愛相談
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「竜子さ〜ん」

「あぁ、アンタか」

「若王子先生と一緒なんて珍しいね」

「くだらない相談を受けてたんだよ」

「若王子先生の?」

彼女はビックリした顔で若王子を見つめている。そしてその若王子が、予期せぬ言動を発したのだ。

「そうだ、ちょうどよかった。君に聞きたいことがあるんです」

「わたしですか?」

「もうすぐ誕生日ですよね?なにか欲しいものはありませんか?」

「は!?」

誰よりも先に驚いたのは、アタシだった。

「なんで竜子さんが驚くの??」

「いや、だって…」

だってこのタイミングで誕生日プレゼントを聞くってことは…

「藤堂さんに相談したら、本人に聞くのが一番だと言われたので、思い切って聞いてみました」

「そうだったんですか」

うーん…と、腕を組んで悩んでいる彼女にバレないように、若王子の腕を引っ張って、小声で問いただす。

「おいっ、若王子の好きなやつってこいつなのか?」

「どうしてですか?」

「さっき自分で言ってただろ」

チラッと彼女を見ると、不思議そうな顔でアタシと若王子を見つめている。

「好きですよ、大事な生徒ですから。あ、もちろん藤堂さんもですよ」

「あのなぁ…」

誤魔化したつもりだろうが、そのうさん臭い誤魔化し方のせいで、ハッキリとわかってしまった。

「それで、欲しいものは決まりましたか?」

「決まりました…」

「なんですか!?」

「えっと〜……」

「遠慮せずに、何でも言ってください!」

「じゃあ……先生の家に住んでる猫ちゃんたちに会いたいです」

思いがけない回答に、若王子はどう反応するべきか考えて固まってしまった。

「えっと、それはつまり…」

「ダメだ!絶対ダメ!」

考えがまとまらないうちに、アタシは彼女をかばい、若王子から遠ざけるようにした。

「え?なんでダメなの?」

彼女はわけがわからないようだ。

「いいか!こいつは教師以前にひとりの男だ。そんなやつの家に行くなんて危険すぎる!」

「なんで危険なの?わたしは猫ちゃんを見たいだけで…」

「つまり、若王子の家に行くんだろ?それがダメなんだって」

「???」

やっぱり彼女はことの重大さに気付いていないようだ。

「藤堂さん、大丈夫ですよ。先生が猫たちを連れてくればいいだけですから」

「え…あ、そっか、そうだよな」

「はい。それとも、ふたりで僕の家に来ますか?」

「それいいですね♪ね〜、竜子さんも一緒に行かない?」

「アタシは行かない」

「え〜……」

「それじゃあ、誕生日前ですが次の日曜日に、猫たちを連れて君の家にお邪魔しますよ」

「はいっ」

「はい、じゃないよ。ダメだ」

「えー、じゃあ、どうすればいいの?」

「とにかく、若王子とふたりきりになるのはダメだから…」

「藤堂さん、心配しすぎです。先生、取って食べたりしませんから」

「笑顔でさらっというなよ!」

「???」
彼女は相変わらず首を傾げたままだ。

「あーもー…わかった。アタシも行くから。場所は若王子の家にしな」

「え!いいの?」

「あぁ…若王子もだけど、アンタの鈍さが心配だから」

「先生、藤堂さんに信頼されてませんね…」

「信頼できるかっ」

「でも、このチャンスは最大限に生かすつもりですから」

「……やっぱり危険だ…」

「ふふっ、楽しみですね〜」

「はい、先生も楽しみです」

「はぁ…」

微笑み合うふたりは、なんだかんだいってお似合いなんじゃないかと思ってしまい、邪魔する気力を無くしてきているアタシがいるのだった…


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