佐伯瑛
□葉月珪に感謝
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――数日後
「瑛、例の撮影の話なんだが…」
じいちゃんが神妙な面持ちで話しかけてきた。
「うん、なんだって?」
「それが、やっぱり別の場所にすると断られたんだ」
散々盛り上がったのにこの様かよ…
嬉しい反面、あいつの喜んだ顔が見られないのが寂しい気もする。
「そっか、良かったじゃん」
まぁ…それが俺の本音だけど。
そして、その結果をすぐあいつにも知らせた。
「もしもし、俺だけど」
『佐伯くん、どうしたの?』
「あぁ、店での撮影の話なんだけどさ、先方の都合でダメになったんだって」
『そうなんだ…残念だなぁ…』
よっぽど葉月珪に会いたかったのか、ひどく落ち込んでいるが電話越しでもわかる。
「そんなに会いたかったのか?」
わかってはいるが一応聞いてみる。
『うーん…そりゃあ会いたかったけど、別の方もダメになっちゃったから…』
別の方?
『だって、葉月珪さんのおかげでお店が忙しくなれば、佐伯くんと一緒にいられる時間も長くなるはずだったのに…』
「!!」
そうくるかぁ…
外に遊びに行くだけが全てだと思っていた俺と正反対ではあったが、根本的に一緒にいたいという気持ちは同じなのだと気付かされた。
「バカだな…別にいつだって一緒にいられるだろ」
『そうだね!』
これが電話で良かった…
きっと今の俺は見せられないくらい恥ずかしい顔をしてるはずだから…
心の中で葉月珪に目一杯感謝した。
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