VitaminX
□愛してるの間違い(翼×悠)
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『オレだ。なぜ電話に出ない!』
あぁ…怒ってる怒ってる。
『オレだ。何をしている!オレからの電話に出ないなど、そう簡単に許されることじゃないぞ』
もう…ホント自分勝手なんだから。
『オレだ。早く声を聞かせろ!今すぐだ』
あーあ、かなり怒ってるわね。
『オレだ……その…あれだ…』
ん?なんかさっきの勢いと違うような…
『オマエのことが頭から離れなくて、授業に集中できない…。1分1秒でも、悠里の声が聞きたくて堪らない…』
翼くん…
どうしよう…すごく嬉しくて、嬉しすぎて、携帯を片手に固まってしまった。
反則でしょ。ただでさえカッコいい翼くんに、こんなことを言ってもらえるなんて…
ハッと我にかえり、慌てて電話の履歴を開き、通話ボタンを押す。
呼び出し音が鳴る寸前に、もう相手は電話に出た。
『Hello?』
「翼くん?わたし…」
『あぁ…』
「ごめんね、前の時間授業が入ってて電話に出れなかったの」
『そうみたいだな』
てっきり怒ってるかと思ってた。だから、優しい翼くんの反応が意外だった。
「それでね…」
わたしも伝えなきゃ!翼くんと同じ気持ちだってこと。
『…悠里』
「え?なに?」
『わかっているだろうな』
「ん?」
『オレからの電話に出ないとは、いくら悠里でも、容赦はしないぞ』
「…えぇ!?」
怒りすぎて大人しかったのね〜(涙)
『そうだな…。オレを愛してると、オレが満足するまで言ってもらおうか』
「え!?今?」
『そうだ。ほら、早く言え』
「む、無理よ。ここは職員室なんだから、みんなに聞こえるわ…」
『構わない。聞かせてやるがいい』
「あのね…」
『言わないと、24時間電話を鳴らし続けるぞ』
「それは困るわよ」
『なら言うんだな。オレはいつでも構わんぞ』
「うっ…」
さっきはあんなに甘い言葉を言ってくれたのに、全然違うじゃないの〜。
「やっぱり無理よ!」
『オレは、いつ、どこに居ても、悠里を愛していると言えるのだが、悠里は違うのだな…』
きゃあ!またこの子は、恥ずかがらずによくもそんなことを…
「す、好きよ、翼くんのこと大好きだから」
『大好き?愛しているの間違いじゃないのか?』
「どっちでも同じじゃないの?」
「愛してる、だろ?」
うわぁ…電話だから、耳元に翼くんがいるみたいな気になるわ。
「悠里、こっちだ」
「え?」
電話から聞こえているはずの声が、すぐ後ろから聞こえてきたのだ。
「つ、翼くん、いつからいたの?」
「かなり前だな。悠里がモジモジしている姿は、なかなか可愛かったぞ」
「そんな!!…先生方も、誰か教えてくれてもいいじゃないですか!」
「ふふっ、翼くんの言うとおり、南先生が可愛いものですから」
嫌味ひとつない、衣笠先生が微笑んでいる。
「なかなかわかるやつだな、ハーッハハハ」
「笑うなっ!」
「では、続きをどうぞ、悠里」
わたしを優しく抱き寄せた翼くん。さっきの電話みたいに、甘い囁きをくれる。だから、職員室にいることを忘れて、思わずこういってしまうのだ…
「あ、愛してるわよ、翼くん…」
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