月森蓮

□末永くよろしく
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〜7時45分〜

朝から良く晴れていて、青空が広がっていた。

いつもどおり、君の家の前で待っている。暖かいから前みたいに日が当たる場所を選ぶ必要が無くなった。

まだ彼女との約束の時間まで5分ある。早く着いた時のために本を用意しているので彼女を待つ時間も苦にならない。

塀にもたれて、本を開こうとしたまさにその瞬間!!

「香穂子!早くしなさい!」
「わかってるよ〜」

その声ひとつで家の中の慌ただしい様子が伝わってくる。きっと彼女は少し遅れてくるのだろう、ということも…

気を取り直して、再度本を開こうとする。しかし今度は玄関のドアがガチャリと開いた。

(もう来たのか?)

先程の様子ならまだ準備中かと思っていた。だから開いたドアから出てきた人を見て、思わず言葉を失ってしまった。

「あれ…?うちに何か用ですか?」

家の中から現れたのは彼女ではなく、彼女のお姉さんだった。

「あ…あの……」

彼女と登校するようになってだいぶ経つが、こうして彼女の家族と遭遇するのは、意外にも今が初めてだった。

お姉さんは門の扉を開け近付いてきた。


「もしかして香穂子に用事?あ、でも制服違うか」
「………」

人前で演奏する時だってこんなに緊張したことはないくらい緊張していて、言葉がまったく出て来なかった。

「わかった!香穂子のストーカー?」
「違います!!」

思い切りよく否定した姿を見て、お姉さんは笑い出した。

「あはは!」
「え…」
「冗談だよ、あはは…」
「あの……」

どうやらからかわれていたようだな。

「初めまして、星奏学院音楽科2年の月森蓮です」
「知ってるよ」
「はい?」
「香穂子から聞いてる。ヴァイオリン弾くんだってね」
「はい…」

彼女が自分の家族に僕のことを話しているとは知らずにいたので驚いた。

「朝から家に来るってことは、月森君は香穂子のことが好きってわけか」
「え!」
「そうでしょ?違う?」

そう聞かれるということは、彼女は僕のことをどう話していたのだろうか…。

「僕は…香穂子さんと、ずっと一緒にいたいと思っています。俺には彼女が必要なんです…。末永くよろしくお願いします」

深々と頭を下げる。

「だってよ、香穂子。よかったね」
「えっ…」

あわてて頭を上げると、玄関にはすでに制服に着替えている香穂子の姿が・・・



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