月森蓮
□君は僕だけの
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放課後。
ある練習室の前に人だかりができていた。
「すご〜い」
「知らなかったぁ」
「カッコいい!!」
特に音楽科の女生徒が騒いでいるようだ。その人だかりの中に3年生の火原先輩が混じっていた。
「火原先輩?」
「あっ、月森くん、ちょうど良いところに来たね。ちょっと見てみなよ」
「はい?」
「いいから、ほらっ」
そう言って、練習室のドア近くまで押し出されたおかげで、ドアのガラス窓から中を見ることができた。
中では女生徒がひとりヴァイオリンを弾いているのが見えた。
「見えた?」
「はぁ…」
「俺知らなかったからビックリしちゃったよ〜、吉羅理事長ってヴァイオリン弾くんだね」
「え?」
火原先輩に言われて、もう一度中を良く見てみると、背広を着た吉羅理事長がヴァイオリンを構えていた。しかもその隣にいる女生徒は普通科の日野香穂子ではないか。
「…日野?」
「うん、香穂ちゃんに教えてあげてるのみたいだね」
金澤先生から、吉羅理事長が学生時代ヴァイオリンを弾いていたことは聞かされていた。しかし、日野に指導していることまでは聞かされていなかった。
「すごいなぁ〜」
「………」
火原先輩のように、感心している暇は無い。吉羅理事長の指導を受けている日野香穂子は俺の恋人なんだから…
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