月森蓮

□もう少しこのままで
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俺はおかしいのだろうか…

彼女とはライバルという垣根を越えて、お互い無くてはならない存在になった。以前なら、彼女がどこに居ようが、誰と何をしてようが気になどならなかった。

だが今は違う…

君が今、どこで何をしているのか気になってしょうがない。

自分がこんなにも独占欲が強い人間だとは気付かなかった。

練習中の今でも、こうして頭の中は彼女のことでいっぱいだ。彼女がいない時はどんなことを思っていたのか思い出せないくらいに…

リリリリリリリリ リリリリリリリリ

着信音が部屋中に響き渡る。なんだか夢から現実に戻された気分になる。

着信は彼女からだ。俺の気持ちが届いたような気分で嬉しくなる。と同時に、緊張の波が押し寄せる。

ふう、と呼吸を調えて通話ボタンを押す。

「もしもし…」
『あ、ごめんね、練習中だった?』

電話に出るのが遅くなってしまったからか、一言目は謝まりの言葉だった。

「あぁ。君は何をしていたんだ?」
『私も練習してた』
「そうか」
『でもね…なんか集中できなくてさ、今児童公園に来てるの』

児童公園というのは、俺と彼女が幾度となく寄り道をしたあの公園だろう。しかし今は夜の9時を過ぎている。

「大丈夫か?夜の公園にひとりじゃ危ないだろ」
『わかってるよ…だから月森君に電話してれば大丈夫かなって』

大丈夫なわけがない。いくら平和な世の中になったとはいえ、夜遅くに女一人で公園にいるなんて危なすぎる。

「このまま、電話を切らないでくれ」
『え?』
「今からそこに行く」

家からだと走れば5分くらいで着くだろう。彼女に何かあった時のために、通話状態でいてくれと約束し、勢いよく家を飛び出した。


――――
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