金澤紘人
□今月の目標
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少女マンガでなら、読んだことのある“教師と生徒の禁断の恋”…そんな禁断の恋真っ最中のわたしには悩みがある…
それは、先生がデートに誘ってくれないこと。
そして今のわたしの目標は、先生とデートの約束をすること、なんだけど…
――普通科棟廊下にて
「おーい、日野」
呼び掛けられたその声は、間違いなく私の好きな人の声。でもここは普通科棟だ。もしかして私に会いに…
「金澤先生!!」
「なんだ、エラくご機嫌だな」
「そうでもないですよ〜」
「ご機嫌のところ悪いが、ほれっ」
そういうと頭の上にズシンとした重みを感じた。
「わっ、なんですか?」
「喜べ。プレゼントだ」
「えぇ!?」
慌てて袋の中を確認すると、そこにあったのは冊数にして5冊、曲数にしたら50曲は軽く超えている楽譜たちだった。
「今月中な」
「はぁ…」
ヴァイオリン初心者の私にこの曲すべてができるようになるまで、かなりの時間がかかることを知っての嫌がらせとしか思えない…
「なんだよ…嬉しくないのか?」
「嬉しいわけないですよ!!」
「そっか、それは残念だな」
「え?」
「じゃ、行くわ」
「あ、はい。わざわざありがとうございました」
「おー」
そういうと、手を振りながら音楽科棟のほうへ歩いていってしまった。
「なによ…」
わざわざ普通科棟まで来て、しかもプレゼントなんていうから、期待しちゃったじゃない。だよね…あの金澤先生がそういうことするわけないもんね。
プレゼントの楽譜を改めて確認していると、ヒラヒラと長方形の紙が床に落ちた。
「ん?」
その紙を手にとって、驚いた。
それは映画のチケットで、期限は今月末と書かれていた…
“今月中な”
「もしかして…このこと?」
先生が歩いていったほうを確認し、前を向いて走り出す。そして彼の聖地、音楽準備室へと向かう。