金澤紘人

□親睦会を開こう
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「だって、去年は先生がやろうって言ったんですよぉ」

彼女が怒っているのもわからなくはない。
ただ去年とはわけが違う。

「あれはコンクールメンバーの親睦を兼ねてだなぁ…」
そう言い終わる前に彼女は勢いよく話続ける。
「だから今年も親睦を兼ねてやりましょうよ!」

去年、花見をやろうと言ったのは確かに俺だ。コンクールメンバーが決まったばかりで、なんとなくお硬い感じの雰囲気を変えたかった。それで、たまたま思いついたのが花見だっただけだ。

なんだかんだあったコンクールだが、コンクールメンバー同士の絆が一生ものだと知っているのは彼らだけじゃない。自分もそれを知っているからこそ、本当は断りにくい。

「だがなぁ…」
ぽりぽりと頭を掻きながら、断る理由を見つけるのに必死になる。

「火原先輩と柚木先輩も、忙しいけど予定が決まったら絶対顔出してくれるって言ってたし、月森くんと土浦くんもお前に任せるって言ってくれたし、志水くんと冬海ちゃんは買い出しの手伝いをしてくれるって言ってたんです」

そこまで決まってるなら勝手にやればいいのに、と思ってしまうが口にはしない。

それにコンクールメンバーだけで行ったほうが楽しいに決まってる。何より俺は面倒なことはやりたくない。

「もしかして、お前らだけで行けばいい、とか思ってないですよね?」

ドキッ…

彼女はじーっと俺を見つめている。付き合うようになってから、妙に俺の気持ちが読めるようになったらしい。

「思った…」
こういうときは素直になるのが一番だ。

やっぱりね、と言いあきれた顔で溜め息をつく。

「実際そうだろ。若い奴等だけで行ったほうが楽しいだろうし、俺がいったって邪魔になるだけに決まってる…」

そういうと、彼女の表情が険しくなる。
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