金色のコルダ
□初訪問(土×日)
1ページ/4ページ
ドンドンドンドン
ピアノの音に混じって、ドアを叩く音が聞こえた。鍵盤に集中しているため、それでもハッキリとは聞こえていない。
演奏中部屋には入るな、というのが幼いころから、暗黙の了解になっていたため、何事かと思い、演奏を中断した。
「はい?」
返事をすると勢いよくドアが開いた。
「あんた、何分待たせんのよ」
入ってきたのは姉だった。いきなりそう言われても何の話かさっぱりわからない。
「なんだよ、急に」
「急にじゃないわよ、さっきから何回もノックしてたでしょ?」
「知らねーよ」
「まったく…あんたって子は…」
はぁ、と溜め息をつき、弾き始めると止まらない集中力にあきれているようだ。
「で、何なんだよ」
改めて聞き返す。
「そうそう、今ね、あんたに会いたいって女の子が下に来てるのよ」
「女の子?」
「ふふふ、そう照れるなって〜」
別に照れてはいない。ただ俺を訪ねてくる女の子とは誰だろう、と考えていただけだ。
「とにかく、早く降りて。あんた全然気付かないから、だいぶ待ってもらってるんだからね」
「あぁ」
姉に言われるがまま、我が家の一階、つまり母親が教えているピアノ教室に降りてみることにした。