ときメモGS2

□忘れ物には福がある(真咲×主)
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大学からバイトに向かう途中にある、いつもの給油スタンドに車を止める。

駆け寄ってきたのは、背が高くてサバサバしている、いつもの女店員だ。


「いらっしゃいませ〜」


運転席の窓を全開にする。

「レギュラー満タン」

「ありがとうございます、レギュラー満タン入ります」


その一声で、周りが急に騒がしくなる。


「吸い殻はございませんか?」

「無いでーす」

「ゴミは…」

「無いでーす」


昨日掃除したばかりの車内は、助手席にある、あるモノ意外はスッキリとしていた。


(なんで忘れていくかなぁ…)


それを見るたびにため息が出てしまう。

それがあるせいで、少しばかり運転も緊張してしまう。

ちょっと、意識しすぎだろうか…


すると、窓を拭いていた店員に声を掛けかれた。


「彼女さんのマフラーですか?」

「えっ!?」

「あ、すいません。なんかずっと見つめてたみたいなんで…」

自分では気付かなかったが、かなり見てたらしい…


「あぁ…まぁ……」

「そうですか」


うわっ、恥ずかしい…
非常に恥ずかしいぞ…


「いや…偶然にも、あたしの友達と同じマフラーだから、ちょっと気になって」

「友達…?」

「なんかバイト先の先輩の車に忘れてきたって話してたんで……」

「マジで!?」

「はい…」

「え!もしかしてその友達って羽ヶ崎学園!?」

「そうですけど……え……もしかして…」

「俺、真咲です。アンネリーでバイトしてます」


そういうと、彼女は目を丸くして驚いたあと、ハハっと笑い出した。

「ハハッ、本当に?まさかあんたがあの真咲だとはなぁ」

彼女は口を大きく開けて笑っている。


「おいおい“あの真咲”ってなんだよ…」

「悪い。良い意味で言ってんだよ」

「良い意味?」

「あぁ。あたし藤堂竜子。一応あいつの親友」

「藤堂…?なんかどっかで聞いたことあるな…」

その名前は彼女からだったか、それとも幼馴染みの勝己からだったからかは忘れたけど…


「あたしも、あんたの話はイヤというほど聞いてるよ」

「オレの?」

「あぁ。毎日毎日“昨日真咲先輩がねぇ”とか“真咲先輩とドライブに行ったんだけどねぇ”とか、うるさいくらいだからな」

「………っ///」

「嬉しいだろ?」

「べ、別に……」

っていうか、あいつはオレのこと誰かに話してくれてたんだ。そのことが嬉しくて、でもやっぱり恥ずかしくて、結局はうつむいてしまう。


「で?付き合ってんの?」

「ま、まさか!?」

「へぇ…さっきは“彼女のマフラー”って言ってたのに?」

「あ、いや、それは撤回させてくれっ」

「別に撤回はしなくていいんじゃない?そのうち彼女にするんだろ」


確かにオレの中では、あいつはもうただの可愛い後輩じゃなくなってきてる。

だけど、自分の気持ちを押しつけたくは無かった。

というか、あいつがオレのことどう思ってるのか……ただ不安なだけ。


「そりゃあ……」

「なんだよ、情けねぇな。男ならガツンと言ってやれよ。まさか、今のままで良いとか思ってないよな?」

ギクッ


正直そう思ってる自分がいるのも確かだ。


「あいつは?オレのことどう思ってるんだ?」

「知らない」

「だよな……」

ちょっとは期待した自分がバカだった。


「ただし……あいつはかなりの鈍感だから、ハッキリ言わなきゃ伝わらないのは確かにだな」


ふっと微笑んだ藤堂は、給油が終わった給油口へと向かう。


そうだよな……


バイト先にはあいつ目当ての男子が来てるし、早くなんとかしないと…


ヤバイ!?


なんかものすごく焦ってきた自分がいる。


「3,745円です」


「あっ、じゃあ4,000円で。釣りはいらない。サンキューな、藤堂」

「え!お、おいっ…」


呼び止める声があっという間に小さくなる。

とにかく今は、アンネリーに行かなきゃ!!




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