針谷幸之進
□温泉に行こう
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放課後…、彼女を家まで送っていく途中、彼女が変なことを言い出した。
「ねぇハリー、温泉に行かない?」
「はぁ!?」
温泉…?温泉って言えば、電車で2〜3時間のところにあって、部屋から見える景色がキレイで、料理がうまくて、露天風呂があって、風呂から上がると布団が妙に近くに敷かれてるっていう…あれのことか?
ってことは泊り?
んな簡単に泊りに誘ってんじゃねぇよ!
「バ、バカじゃねぇの!そんな温泉に行く金なんてねぇよ」
「それなら大丈夫だよ。バイト先の先輩から、割引き券もらったんだ」
割引き券…
そんなことしてまでオレと一緒に温泉旅行がしたいのか?
「でも、バイト休めないだろ…」
オレは楽器屋、こいつは花屋のバイトが入ってるから、休みを合わせるとか大変だろうしな…
「バイトは休まなくても大丈夫だと思うけど?」
ってことは、1泊くらいか…?いや、日帰りってのも無理な話じゃないか。
「けど、せっかく行くなら長くいたほうが良いと思うけどな…」
つうか、どさくさに紛れて何言ってんだ、オレ!!
「ハリー、温泉好きなの?」
「は?」
なんでそうなるんだよ。自分から誘っといて、ホント鈍感なやつ…
「温泉が嫌いなやつなんていないだろ。料理は美味いし、景色だっていいんだろうからさ」
「ハリー、良く知ってるね!もしかして行ったことあるの?」
「あ、あるわけねぇだろ!一般論だっつうの」
「そっか。じゃあわたしと行くのが初めてなんだよね?」
「当たり前のこと言うな!」
他の女と温泉旅行なんて行くわけないだろうがっ!
「ふふっ、良かった」
その微笑んだ顔がすっげー可愛くて、心臓がドクンと響いたのがハッキリとわかった。
「…で?いつ行くんだよ、温泉旅行」
「旅行?」
彼女はなぜか首をかしげて、不思議そうな顔をしている。
「温泉に行くんだろ?だったら旅行だろ」
「えぇ!?」
なんでそこで驚くんだ…?
「ち、違うよ!わたしは温泉に行きたいって行っただけで…」
なんだぁ?自分から誘っといて、今さら照れてんのか?
「オレはオマエがその気なら、バイトだって休みもらうし」
「だから、休まなくても大丈夫だよ!だって…」
そう言って、カバンの中から一枚の紙を取り出し、オレに渡してきた。
「ん?」
その紙には…
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