若王子貴文
□恋愛相談
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「オッス!ありがとうございやす!」
「あぁ、頑張れよ」
昼休み、恒例となりつつある男子生徒からの相談が終わり、廊下から教室に戻ろうとしたところに、また男から声をかけられた。
「藤堂さん」
「ん?なんだ、若王子か…」
男は白衣をまとった長身の男、化学教師の若王子だった。
「藤堂さんは男子生徒に人気があるようですね」
「人気?そんなんじゃないよ。なんか知らないけど、いろいろ相談されるんだ」
「相談ですかぁ」
「ま、頼られるのは嫌いじゃないし、困ってるやつのためになるならって、やってるんだけど…それが、どんどん増えちまって大変なんだ」
「やっぱり人気者なんですね!」
「ははっ、そういうことにしておくか」
「あのぉ…それって、先生の悩みも受け付けてますか?」
「若王子も悩みがあるのか?」
「はい!先生だって人間ですから」
「ふーん…面白そうだな、聞いてやるよ」
「やや、助かります」
「それで?」
「はい。先生、好きな人がいるんですけど…」
「そうなのか!?」
「はい…おかしいですか?」
「…いや…普通、生徒にそんなこと話すかなって…」
「言わなきゃ相談できません」
「まぁ、そうだけど……それで?」
「彼女は先生より年下で、笑顔が素敵な、すごく可愛らしい人なんですけど」
「それはいいから、悩みってなんだよ」
「そうでした。えっとですね、もうすぐ彼女の誕生日なんですけど、何をあげたらいいか悩んでるんです」
「誕生日プレゼントか」
「先生、女性にプレゼントしたことないので検討もつかなくて」
この手の相談はよくある。そして、そのすべてにこう答えていた。
「そんなの聞けばいいだろ」
「でもビックリさせたいと思ってるんです」
「だったら自分で考えな」
「冷たいですね…。じゃあ、藤堂さんは何をもらえると嬉しいですか?」
「アタシ?…そうだな。今は新色のマニキュアかな。てか、アタシに聞いてどうすんだよ」
「いやぁ、同年代の意見は参考になるかと思ったんですが」
「同年代?」
「いや、なんでもないです」
「そういうのは本人に聞くのが一番だよ。ビックリさせるのはいいけど、いらないものもらっても嬉しくないだろ」
「なるほど、そうですよね」
「そうだよ」
すると、遠くの教室からひとりの女生徒が出てきて、アタシと若王子を見つけては、こちらに向かってパタパタと駆け寄ってきた。
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