佐伯瑛

□彼女の浮気?
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「おっ、佐伯じゃねーか」

珊瑚礁の買い出しで、商店街にきていた俺は最近よく聞く声に呼び止められた。

「なんだ、針谷か…」

休みの日まで学校の奴に会いたくない。

「なんだはねぇだろ。つうかハリーって呼べ」
「やだ」

私服の針谷はミュージシャンを目指しているだけあって、休日の服装にも気合いが入っているように見える。

「こんなところで何やってんだ?」

荷物を抱えている俺を見て針谷は聞いてきた。

「買い物だよ。見ればわかるだろ?」

ふーん、と腕を組みこちらを見たままだ。

「なんだよ…」

「なぁ、俺様は何してたと思う?」

なぜか威張ったような口調で聞いてくる。

知るか…。お前の休日の過ごし方に興味は無い。
そんなことを思っていたら、針谷が自慢げに

「あいつと映画に来てたんだ」

あいつ?あいつだけじゃ誰のことかわからない。

「今トイレに行ってるからもうすぐ来ると思うぜ」

だから待ってろ、と偉そうに俺をその場に残そうとしている。

誰が来るか知らないが、面倒なことにならないうちに帰りたかった。

「おっ、来た来た」

後ろから現れたのは、針谷曰くあいつ、そうあいつだ。

「おせーよ」
「ごめんね、ハリー」

小走りで戻ってきたあいつは、いつもよりおしゃれにしている気がする。

「あれっ?佐伯君?」

少し遅れて俺に気付いたあいつはかなり同様しているみたいだ。

「さっきそこで拾ったんだ」

針谷がまた自慢げに話す。

「こんなところで何してるの?あ、買い出し?」

俺が今日珊瑚礁で働いていることを知っているから、“買い物”ではなく“買い出し”になるのは当然だ。

「あぁ…」

「そっか…ゴメンね」

そのゴメンは何のゴメンなんだ?
買い出しを手伝えなかったことなのか、針谷と二人で映画にきていることに対してなのか…

「なんで謝るんだよ」

なんか腹が立ってきた。

あいつは気まずそうにうつむいてしまった。

「じゃあ、帰るから」

「悪いな〜佐伯、呼び止めちまって」

そう思うなら最初から呼び止めないでほしかった。そしたらこんなところも見なくてすんだのに…



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