VitaminX
□父、現る(清×悠)
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「えぇ!?お父さんがこっちに向かってるぅ〜!!??」
母から久しぶりに電話がかかってきたから、何事かと思ったら、当たり前の様に母がこうつぶやいたのだ。
『なんか出張でそっちに行くんですって。ついでだから悠里の様子も見てくるか〜って話になってねぇ』
「い、いつ着くの…?」
『さぁ……そろそろ着くんじゃないかしら?』
「えっ!?」
今日は金曜日…。
よっぽどのことがない限り、彼がわたしの部屋に泊まりにくる日なのだ。
『何か予定でもあるの?』
「そうじゃないけど…何も用意してないし…」
『別にいいじゃない。悠里の元気な姿を見に行くだけなんだから』
「そ、そうだよね…」
まさか彼氏が泊まりに来るなんて、口が裂けても言えないわ…。ただの彼氏ならまだしも、年下のしかも教え子ときたもんだ。
『じゃあ、お父さんのことよろしくね』
「うん。わかった…」
母との電話を切ったあと、わたしはパニックのあまり、しばらく固まってしまった。
気付いたときには、時計の針は夜の9時をまわっていて、ようやく自分のやるべきことを思い出した。
(そうだ!清春君に電話しなきゃ!!)
父はいわゆる堅物な人で、携帯電話やパソコンなど、新しい物を使おうとしないのだ。となると、連絡するのは清春君が先になる。
ピッピッ
(お願い!出てちょうだい)
電話を握っていない手に、ギュッと力が入ってしまう。
プルルルルル プルルルルル
『もしもし、南先生?』
「………ん??」
『…南先生ですよね?』
「え、あっ、そうよ」
(わたしのこと先生っていうなんてどうしたのかしら…?でも、声は清春君よね)
『清春です。ちょうど良かった。今、先生のお宅に向かっているんですよ』
「ホント??」
『はい、もうすぐ着きます』
「そうなの?あのね…近くまで来てるのに悪いんだけど、実は………」
そう言いかけた時、玄関からチャイム音が聞こえてきた。
ピーンポーン
(え!誰か来た?)
「き、清春君、ごめん!またすぐに電話かけるから」
慌てて電話を切り、玄関へと走り寄る。
タタタタタタ
いつもなら誰が来たのか確認するのに、今日に限って勢いよくドアを開けてしまった。
そして、そこに立っていたのは……
ガチャリ
「久しぶりだなぁ、悠里」
「お父さん!!」
そして、その後ろには……
「こんばんは、南先生」
「き、清春君〜〜!?」
わたしは清春君の異変に気付いていたはずなのに…この時のわたしには、この後起こるであろう災難を予想することはできなかった。
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