ときメモGS
□先生の秘密(氷×主)
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社会見学というなのデートの帰り道。
私と先生は、いつものあの店にいくのが当たり前になってきていた。
カランカラン
「いらっしゃい」
カウンターの中から笑顔で迎えてくれるのは、先生の幼い頃からの友人で、この店のマスターである益田さんだ。
「なんだ、またお前らか」
「客に向かって“また”はないだろ」
先生の口調は怒っているが、いつもより優しさがこもっている気がする。
「はいはい、すみませんでした」
「はい、は一回でよろしい」
そんな二人の様子を見るのも、定番になりつつある。微笑ましい姿に、私も思わず笑みがこぼれてしまうのだ。
「彼女も、いらっしゃい」
「こんばんは」
小さくお辞儀をしたあと、カウンターの、先生の隣の席に座る。
「レモネード2つ、だよな」
「そうだ」
先生は決まってレモネードを頼む。お酒を飲む姿はまだ一度も見ていない。
「たまには違うの頼めよ〜。彼女、飽きたかもしれないぜ」
「そうなのか?」
「と、とんでもないです!好きですよ、レモネード」
「だそうだ」
「ちぇっ…零一の酒飲む姿見せたかったのになぁ」
「私は車で来ている。酒など飲むわけないだろう」
「はいはい」
そういえば先生がお酒を飲むとどうなるのか、聞いたことがなかった。
「益田さん、先生がお酒を飲むとどうなるんですか?」
「え!彼女、知らないの?」
「は、はい……?」
「そっかぁ…だよなぁ…あんな姿、彼女にみせられないもんなぁ」
くくくっと、何かを思い出して笑う益田さん。
「私は普通だ、至って普通だ!」
先生は慌てて否定する。
一体どちらが正しいのだろう?
「彼女、見たらきっとショック受けるもんな〜」
「そんなにヒドいんですか?」
「違う、断じて違うといっているだろう。益田、変なことをいうんじゃない!」
力一杯否定されるのも、なんだか逆に怪しい気もする。
「オレは何も言ってないだろ」
「彼女が誤解するような発言は慎みなさい」
「隠してるほうが悪い」
ねぇ、と益田さんは私に同意を求める。
「べ、別に隠しているわけでは……」
「ならいいじゃん。彼女〜、実はさぁ…」
「ま、待ちなさい!」
益田さんを遮るように、先生が止めに入った。そして、一呼吸おいてからゆっくりと語り出す。
「…益田。すまないが今日はもう帰ることにする」
「…あれ…怒ったのか?」
「怒っていない、といえばウソになるが、今は違う。とにかく帰る。行こう」
立ち上がって、私の腕をつかみ歩きだす先生。
「先生?」
結局私たちは、飲みもの代も払わず、そのまま店からでてしまった。
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