ときメモGS
□必要なのは(葉×主)
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俺は別に困っていない。
しかし俺以外の人にとってはいい加減マズいらしい。
「マネージャー…」
「そう。葉月もさ、だいぶ人気出てきたし、撮影も忙しくなってきただろ?だからマネージャーつけてスケジュール管理とかしてもらったほうが良いと思うぜ」
そう言っているのはいつも雑誌撮影の依頼をしてくる出版社の担当者だ。
「興味ありません」
「いや…興味の問題じゃないんだよね」
苦笑いをしているのがわかる。でも興味がない、必要がない、それが今の本音だ。
「先のことも考えたら、今から付けといた方が自分のためだぞ」
「はぁ…」
先のこと…自分のため…
自分の将来のことなんて自分にだってわからないのに、この人は俺の何を知っているんだろう、と思った。
「最初は葉月の知り合いでもいいんだぞ。ずっと一緒にいるんだから、気心が知れた人のほうがいいだろ」
「知り合い…」
知り合いと言われて何人も名前が浮かんでくるほど交遊関係は広くない。だから真っ先に浮かんだのはあいつの名前だった。いや、あいつしかいない。
「お待たせしました〜喫茶ALUCARDです」
この一言で撮影所の雰囲気がガラリと変わる。休憩時間の合図。あいつが来たのだ。
「来た来た!こっち持ってきて」
プロデューサーが手招きすると彼女は素直に歩いてくる。
「お待たせしました、一応確認してください」
「あぁ、いいのいいの。足りなくても大丈夫だからさ。いつもありがとね」
週に2回は配達に来ている彼女を、プロデューサーは気に入ってるらしい。
「いえ!こちらこそ!」
そういって深々と頭を下げる姿は愛らしいものがある。
コーヒー頼んだの誰だぁ、とプロデューサーが叫ぶなか、俺は彼女と目があった。
「お疲れ」
「それは葉月くんでしょ」
うふふ、と微笑む彼女を見ると疲れが一気に無くなる気がする。
「別に疲れてない」
「わたしだって!だって葉月くんに会えるし…あっ!な、なんでもない」
と言われても、しっかりと聞こえている。
「バイト何時まで?」
「いつもどおりだよ」
「じゃあ後で行く」
「うん!待ってるね」
“自分の連れ”と前に話してはいるものの、周りに怪しまれないように短く小声で話し終える。
「葉月はモカだよな」
「あ、はい」
じゃあと、いつもどおり目で別れを告げる。