ときメモGS
□いただきます(氷×主)
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「お待たせしました、こちら珊瑚礁ブレンドになります」
現われた店員が、まずは私の前にコーヒーを置く。マナーもしっかりと取り入れた接客に、もうケチのつけようがない。
「どうぞ」
「ありがとうございます。あの追加でショートケーキをお願いします」
「かしこまりました。ではごゆっくり…」
そう言って立ち去ろうとする彼を何故か彼女は呼び止めた。
「あっ!!それっ」
突然の呼び掛けに店員も驚いているようだった。
「…なにか?」
「その指輪、葉月くんのやつですよね?」
指輪…?
思わず彼の手を見入ってしまう。
「はい。よくわかりましたね」
「やっぱり〜わたし葉月くんとは高校時代の友人で、今でもたまに会うんですよ」
「そうなんですか」
友人か…確かに二人は仲がよく、卒業後の今でも交流があるとは聞いていた。
「葉月くんのアクセサリーって、すぐ売り切れちゃうから入手困難なのに…」
「そうみたいですね。僕は彼女が買ってきたので…」
「へぇ…素敵な彼女さんですね」
「まぁ…」
「あ、ごめんなさい…お仕事の邪魔しちゃって」
「構いませんよ。葉月さんによろしくお伝えください」
「はい」
失礼します、と会釈をして今度こそテーブルを離れた。
「嬉しいなぁ…葉月くんにすぐ教えてあげなきゃ!!」
「その必要は無い」
一連の流れを黙って見ていた私だが、ついに口を開いた。
「どうしてですか?」
「では逆に聞こう。君が葉月に連絡したところでどうなる」
「どうなるって…」
「答えられないのであれば、連絡不要ということだ」
「………」
葉月に対し、執着心があるのは彼女より私なのだ。彼女は友人だと言うが、きっと葉月は彼女を友人以上だと思っているはずだ。つまりは私のわがまま、ということになる…
「別に、先生の許可をもらわなくても、勝手に連絡させていただきますからご心配なく〜」
わざとらしく丁寧語を使い、彼女は黙ってコーヒーを飲みはじめた。
単なるわがままだと、認めてしまえばいいのだろうか…いや…そんなこと私のプライドが許さない。