夢幻
□オレ、天使。
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最近…、こんな"夢"を見る…。
気が付くとワシは着物を着ていて…
何処かの家の庭の真ん中に立っている……。
ワシは…、一体何をしているんじゃろう…。
ただ、立ち尽くしては居るのだが…『何処か』が変なんよ…。
何が… 変なんかというと…
…多分その訳は…
立ち尽くして居るワシの目の前に、十二単衣を着た女性が…苦しそうに蹲っているからだと思うんじゃ…。
…でもワシは…、それを無表情のまま見つめとるだけなん…。
…どうして、助けないんかって?
…ワシだって、助けたいんじゃ!!
じゃけど…、どうしても動かないんよ!
身体が…、石のように固まって動かないんよ…!
自由が利かないんじゃ…!
…どうして……?
『ハル!!』
背後で、ワシを呼ぶ声がした…
ダメじゃ!
後ろ向いちゃあかんよ!!
向いたら…ワシは…
そう思っとるのに…身体が勝手に動いて…ワシは、後ろを向いてしまった…。
ワシが向いた先には、ワシと同じような着物を着た"昭仁"と"Tama"、そしてもう一人…女性のような顔立ちの美しい青年が青褪め、驚愕したように立っていた…。
昭仁とTamaは、ワシに向かって何かを必死に叫んどるようじゃが…何も、…ワシには聞こえなかった…。
『ハル! 油断するでない!
早く、"印"を!!』
突然、その青年がワシに向かって悲鳴の様に必死に叫ぶ声が聞こえた!
それと同時にワシは、激しい頭痛に突然襲われ、ワシの体は何らかの衝撃を受けたように大きく弾かれた。
ワシの身体は宙を舞い、鈍い音と一緒に地面にたたき付けられていた。
全身には途轍もない激痛が走り、意識が遠のいて行くのが分かった…。
そんな意識の中…ワシはただ、ひたすら『死にたくない…』と思っていた…。
ワシは、最後の力をふり絞ってゆっくりと目を開けて周りを見回した…。
すぐ側には、心配そうにワシを見つめるTamaと、今にも泣き出しそうな昭仁がいつもの服を着て横に座っているのが見えた…。
その後ろでは、着物を着たままの青年が、悲しそうに何かを呟きながら見つめていた…。
とても綺麗に澄んだ藍色の瞳…、誰かに似ている様な……誰だっけ…?
とても、懐かしい気がする……
でも、…一体、ワシ…どうしたんよ…
どうして、こんなことになっとるんよ…
ワシ…
死ぬんか…?
…なぁ、誰か…
誰か…、ワシを助けて!!
まだ、死にたくない…
そう思った瞬間、ワシの目の前に真っ暗な闇が広がっていった…。
そして命の灯が消える直前、昭仁の絶叫が微かに聞こえた…。
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