宝物小説(戴き物小説)3

□fall for Love 岬
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後日。
全日本の召集があった。

久しぶりに会う顔なじみのメンバーは、やはり僕の短くした髪型に食い付いてきた。

「どうゆう心境の変化だよ。」

「それじゃー、王子キャラじゃねーな。」

「さらに幼くなったんじゃね?」


みんなの好き勝手な言い分に、

(僕は短いのは似合わないんだな)

と思った時だった。


「あれ?岬くんこんなトコにホクロがあるよ?」

「え?」

僕を後ろから抱きしめるように、翼くんが耳の後に顔を寄せる。

「ここ。ココに2つ並んだホクロがあるー。」


──記憶が蘇る。
この間、やめてって言っても攻められた場所だ。


「短いのも可愛いー!」



若林くんと目があう。
その表情は怒っている。
…仕方ないよ、僕は知らなかったんだから。
不可抗力だ。


***


その晩、僕の部屋にきた若林くんは、やっぱり耳の後ろに執拗にキスをした。


「おまえのホクロの位置は俺だけ知ってればいい。」


「そんなことより合宿中はしない約束だろ?…もう!聞いてる!?」

昼間の翼くんの無邪気さは、若林くんの嫉妬心を扇ぎたてたらしい。
僕が強気に出ても、独占欲に火がついた彼をなだめる事はできなかった。


***



「君とはもう、しない…っ…あっ…!」


全身を嫉妬で支配された若林くんの深く激しい攻めに、とうとう僕は意識を失った。


…さき

みさき


若林くんの声が聞こえる。


「俺も、すぐそっちにイクから。そこで待ってろ。」


戻りかけた意識の中で、僕は髪を切った事を後悔した。


***


明け方。
喉の乾きに目を覚ますと、狭いベッドの中にはまだ若林くんがいた。


「…自分の部屋に戻らなかったの?」

「無茶させたからな。気を失ってるお前を一人にできないだろ?」

「わかってるなら、もうちょっと手加減してよ。」

若林くんは、僕の怒りに悪びれた風もなく

「そんなに怒るな。だいたい好きなヤツの事で冷静でいられる方がおかしいだろ。」

そう言って強引に、僕を背後から抱きしめた。


耳の後ろに吐息を感じて、びくりとする。
あれだけ攻められてもまだ、慣れない。

「髪切るまで、おまえのここにホクロがあったなんて知らなかった。」

「…僕も。さっき、翼くんに言われるまで知らなかったよ。」

「翼のヤツ…あんな堂々と抱きつきやがって。」

「そんな事でやきもち妬かないでよ。」

「やきもちくらい妬くさ。お前を本当に好きだから、したくもなるんだ。お前を誰にも触れさせたくない。ホクロの位置さえ知られたくない。」

僕は若林くんの独占欲が嬉しくて、小さく笑った。


***


「起床まで時間がある。岬、もう少し眠ろう。」

返事のかわりに体の向きを変え、若林くんの胸に顔をうずめた。

いつもは自信たっぷりで、弱みなんか見せない若林くんが、たかがホクロでやきもちを妬くなんて。

君はみんなが知らない僕をいっぱい知ってるだろ?

おとなげない態度を見せる君が可愛くて。そんな若林くんを知ってるのは僕だけなんだ、と思うと幸せな気分になる。


本当は、約束を破ってまで僕を求めてくれて嬉しかったよ。


『お前を本当に好きだから…』


僕だって君が好きだ。

僕だって、だから決して冷静でなんかいられない。

君のこと、欲しくてたまらないよ。


明日の練習は身体が動くか心配だけど、それはちゃんとフォローしてくれるんだよね?


僕は、寝息をたて出した若林くんにそっとキスをして目を閉じた。


おわり
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