宝物小説(戴き物小説)3

□羽音
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小さな岬くんがブーンと飛んでいると、虫取り網で捕獲されました。
「何だ、これ?」
赤い帽子を被った少年が言いました。
「君、僕が見えるの?」
網から解放された岬くんは、少年の手の平に乗せられました。
「俺、若林。お前、誰だ?」
「僕、妖精見習いの岬っていうの。」
「ふーん。岬、あんパン食べるか?」
岬を手の平から下ろすと、少年は自分のカバンからパンを取り出しました。
それから、岬の隣に座ると、パンを少しちぎって岬に渡しました。
「あ、ありがとう。」
岬くんは、こんな風に人間と話したりするのは、初めてでした。
「俺、妖精と話すの初めてだ。」
若林くんがパンを食べながら言いました。
「僕も初めてだよ。あんパンも初めて食べた。」
「俺も妖精とパン食べるの初めてだ。」
二人は顔を見合わせると、笑い出しました。
それは、小さな田舎町の夏休みのお話でした。



おしまい
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