宝物小説(戴き物小説)3

□ねこ
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朝起きたら、僕はねこになっていた。小さな体に『ニャー』としか鳴けない声。
どうしようと思いながら、部屋をウロウロした。そのうちに、お腹もすいてきて心細くなった。
「ミィ、ただいま!」
部屋に入って来たのは若林くんだった。ここは若林くんの部屋みたいだ。
(あれ?)
若林くんは南葛高校の制服を着ている。それに、この部屋に見覚えが無い。
(そっか、僕は夢を見ているんだ。)
「ミィ、ミルク飲むか?」
どうやら僕の名前は『ミィ』らしい。ミルクの入ってるお皿に近づき足を止めた。飲み方が分からない。
「ニャー?」
若林くんは優しく笑ってスポイドを持って来た。それでミルクを吸い込むと、僕の口に運んでくれた。
「ミィはミルク飲むのがなかなか上手にならないなあ。」
(きっと若林くんがいつもそうやって甘やかすからだよ。)
そう思いながら、若林くんの優しさが僕はとっても嬉しかった。ミルクを飲み終わると眠くなってきた。
若林くんはベットに寝転がってサッカー雑誌を読んでいる。時々僕に選手の写真を見せてくれたり、試合の解説をしてくれた。
(夢の中でもサッカーが大好きなんだね。)
僕は若林くんの楽しそうな様子をじっと見ていた。
「ミィ、眠くなった?」
若林くんは自分の胸の近くに僕を抱き寄せて、頭をそっと撫でてくれた。若林くんの手は優しくて暖かかった。僕は甘えられる『ねこ』の姿でもいいかなと思っていた。
(でも…)
僕もサッカーは大好きだ。やっぱりサッカーをやりたい。それに若林くんも大好きだから、話がしたい。「ニャー」だけしか鳴けないのは嫌だ。
(今度目が覚めたら人間にもどってますように。)
そう祈りながら僕は目をとじた。
(それから若林くんが『ミサキ』って呼んでくれますように。)



END
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