捧げるものたち

□暖かいね
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「この時期って一番中途半端だよね」


昼間と違い夕方になるとかなり肌寒い。

私は冷えた肩を震わせる。



「何で夕方になると寒くなるんだろうな」

「押しくらまんじゅうしようよー」

「んなこと出来るか!!」



圭くんの声に私はあぁ…とため息を漏らす。

自分の手に目を移すと、グルグルに巻かれたロープ。


そうだよね、こんな状況じゃ押しくらまんじゅうなんて出来ないよね。



さて、今の状況を説明しようか。





30分前、部活で圭くんと私がビリになった。

沙都子と梨花、魅音がグルだったとは…。


ビリは、メイド服を着る。

…ここまではまぁ良かったんだよ。



そして不幸なことに一位のレナにお持ち帰りされた。


レナは『もっとかぁいいの二人に着せてあげるね!』なんて言って走っていった。

…レナの隠れ家に私と圭くんを置いて。



「…でも圭くんメイド服似合うねー」

「その言葉そのまま返すぜ」


ハハハ、何をおっしゃる。


「レナいつ帰ってくるんだろう…」

「さぁな…」


メイド服を着て、手足をロープで縛られて、レナの隠れ家の中にいる私達。

ハタから見たら変な光景だろうなぁ。


それにしても寒い。

私は我慢できずに圭くんにくっ付く。


…何故か圭くんは真っ赤になる。

WHY?


「お前…ちょ、何を…」


ぴったりと寄り添って圭くんの肩に頭を軽く乗せる。

あー、楽だ。



…暖かい。

つい最近みた悪夢が脳内を過ぎる。



「おい…」

「…暖かいね、圭くん…あのね」

「何だ?」


何時まで、こんな穏やかな時間が続くんだろうね。


「…何でもないよ」


暖かい。

圭くんは今生きている。



「…圭くんが死んだ夢見たの」

「俺が?」

「…圭くんだけじゃない、レナも魅音も詩音も沙都子も梨花も…雛見沢の人が」



そう、皆死んだ。

私は次々と死んでいく皆を見ていただけ。

皆は冷たくなっていく。




――やめて

何で皆を奪うの



何とか手足を動かそうとしたけど体が動かなかった。

必死に足掻いていると、隣にいた“誰か"が狂喜に満ちた目で嬉しそうに私を眺めていた。



「…皆は今、生きてるよね?」

「生きてるに決まってんだろ?」


そうだね、暖かいから。



「圭くん、今度は大丈夫だよ、」



皆から温もりを奪った奴らを許さない。

大丈夫、今度は、



「二人ともお待たせー!」


レナが駆けてきて、抱きついてきた。

暖かさに涙が零れた、気がした。



――あぁ、暖かいな



皆の温もりが、私には何よりも大切なんだ




(守ってみせる、絶対に。)
 
 

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