『short novel』

□恋の夏期講習
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「終わんないよぉ〜っ!!」




今日何度目だろ、この台詞を言ったのは。


目の前には投げ出されたシャーペンと何枚かのプリント。


そこには『1学期末考査、数学赤点取得者用課題』と長々と題されている。


そう、僕はテストで赤点を取ってしまった。


それはそれはひどい点数、目も当てられないくらい。


だからこんなにもたくさんの課題が出てしまった。


そして、今日はそれを一掃しようとテーブルに向かっている。





「大丈夫だよ、絶対終わるから…。もうちょっと頑張ろ?」





彼女の部屋、でー。



「だってぇ…、こんないっぱいあるんだよ?しかも数学わかんないし…。」


「だから手伝ってあげてるんでしょ?ね?頑張ろっ?」


「……はい。」




リナリーは頭はいい、スポーツはできる、容姿端麗、才色兼備、全部がパーフェクト。

かという僕はスポーツはできるけど…、勉強は全く。


楽しい楽しい夏休みは始まったばかり、なのに僕は小難しい数式にぶち当たる。

僕のために時間を割いてくれている彼女にも迷惑かけて……なんか惨めだ。




「…そう、そこにその式を当て嵌めるの。…ホラできたっ!」


「…やっとプリント一枚目終わった…。ごめんねリナリー、…どっか遊びに行きたいでしょ?」


「平気だよ?私、アレンくんと一緒ならどこでもいいよ!」



可愛すぎるよ、僕の彼女。


こんなこと言われたら頑張るしかないでしょ!


……でもなぁ…、このプリントの量は…。



「…はぁ…プリント多過ぎ…。」



思わず重たいため息がどっぷりと出てくる。


エアコン効いてても頭熱くなってくるよ…。





「…じゃあ…、」



「へ?」










ちゅっー。








可愛いリップ音の後には、10秒くらいの長いキス。


いきなりのことで驚き、頭の熱が頬に集まって、



僕はゆっくり目を閉じて、彼女に唇を委ねた。










「………リナ、リー…。」


「…これで、勉強頑張れる?」


「…うん…、頑張る…。







ー頑張るっ!!!」



こんな薄っぺらな紙に躍らされてたまるかっ!


頑張らなきゃ、君のために。



この夏の恋のためにー!






(ねぇ、リナリー。)


(なぁに?)





(頑張るからもう一回キスしてくれる?)




fin

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