『short novel』

□SNOW
1ページ/1ページ

この頃、夜が嫌いになった。


寒くて、薄暗くて、心までも冷たくなるような気がする。


あの時、告げられた真実。


あの時、淡く灯っていたタバコの明かり。


僕の胸の中に鮮明に刻まれている。



『大切な人を殺さなくちゃならない。』



おかしな話だ、バカバカしい。


僕にとっての大切な人は一人しかいなかった。


けど、それは単なる大きな勘違いだったのかもしれない。


ただ単に、近くにいた僕を利用したのか?


都合の良いように『宿主』として僕を使ったのか?


ほら見ろ。


結局、僕はひとりぼっちだ。


誰にも愛されない、心を持たない人形みたいだ。









「アレンくん。」









彼女は、いつも傍にいてくれた。



「……一緒に、寝てもいい?」



僕が快く受け入れると、彼女はゆっくりとベッドに入り、僕の体にしがみつくようにして目を閉じる。


ここ一週間ずっとこんな感じだ。


彼女は僕の傍にいてくれる。


離れないように、離さないように。


やめてよ。


また勘違いしちゃうだろ?


僕は君に愛されているんだ、とー。


けど、勘違いで終わらしたくない。


僕だって君を愛している。


でも、僕にそんな権利はもうない。


大切な人を、あなたを、この手で消さなくちゃならなくなる。


愛するあなたをー。





「…リナリー。」



「……なぁに?」








「…ありがとう……。」





そしておやすみ。



明日もきっと、いや、必ず僕は君の傍にいる。


理由なんかいらない。


まだ生きていたい、


人として、あなたにとってたった一人の人間として。



雪は、喜びを、そして悲しみを空から舞い散り踊らせる。



人の痛みを深く深く白に染めていく。



雪は、眠る僕のこの祈りを、冷たく世界に響かせる。





(あなたをただ守りたい。


ただ、守りたいだけ。)




fin

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ