『short novel』

□時刻表は君を待っていた
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(あーあ、…濡れちゃった…。)



学校の帰り間際に降り出した雨。


天気予報は曇りのち雨だったけど、あいにく傘は持ってきてない。


ワイシャツも制服もびしょ濡れになってしまった。



(…バスもまだ来ないしなぁ…。)


学校前にあるバス停で帰りのバスを待っていると、髪からポタリと雫が落ちてくる。


それと同時に肌寒さが体に襲ってくる。


そういえば今日の朝の占い、10位だったっけ。



(…ついてない、なぁ…。)



そう思いついたため息ひとつ。


それを掻き消すように、




パチャ、パチャッ。




雨水を含んだ足音が、だんだん近づいてきた。


そして、





「つめて……。」





隣には、私と同じくらい、びしょ濡れの男の子。



確か、朝いつも同じバスに乗る人。


でも私のほうが先に降りちゃうから、きっとバス停3つ先の高校に通ってるのかも。


傘、持ってなかったんだ。



「………。」


(あ…、目合っちゃった。)



注いでいた視線を急いで他のどこかにずらす。


見ていたの、バレてないよね…。




「あの、」



「はっ、はいっ!?」


(声かけられちゃった…。)




「コレ、よかったらどうぞ。」



怒られる、と思って身構えてたら、怒号の代わりに優しさを差し出してくれた。



「風邪、引いちゃうでしょ?」



その手には水色のタオル。


綺麗にたたまれているそれは、とても柔らかそうで、ふわふわとしていた。



「…ありがとう、ございます…。」



(あ、いい香り。)



柔軟剤の香りが鼻をくすぐる。


それと共に、優しい感触と心地良さに体が包まれていく。



占い、10位だったけど、結果のあとにまだ続きがあったっけ。



『うお座のあなたっ!どこからか運命の出会いが転がってくるかも!?落ち込まないで頑張って!』



今日はついてなかったけど、最後の最後にいいことがあった。



たまには、100%占いを信じてみるのも、いいかもね。




fin

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