『novelU』

□みらい
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トントントン…





小気味よく一定のリズムで踊る包丁。


沸騰した鍋の中ではパスタがだんだんと柔らかく茹で上がってきている。


よく晴れた日曜の正午。


今日も奥方が美味しい美味しい手料理を振る舞って、



「いい感じに茹で上がったかな…。」



いると思ったら、









「リナリーっ、お昼出来たよーっ!」






調理していたのはやけに張り切る殿方だった。





「はーい、今行くよっ。」



冬真っ盛りの12月初旬。


ベランダに溜まった枯れ葉の掃除を一度止め、大分重たくなったな、と感じながらゆっくりリビングへ向かう。


『重たくなった。』


太った訳じゃありません。(実はちょっとだけ…。)


重たいのは、そっと触れた自分のお腹、


そこにいるのは、





私たちの新しい家族です。





「ナスのミートソースのパスタとクラムチャウダー。ナスは昨日安売りしてたのを買ってきたヤツだよ。」


「おいしそう〜!いただきますっ。」


「召し上がれっ。あ、熱いから気をつけてね?」



アレンくんは料理が上手だ。


もともと結婚する前から一人暮らしして自炊をしていたから、男性の料理にしてはかなりレベルが高い。


もちろん今日のこの昼食も、



「おいしいっ!ナスにしっかり味が染みてておいしいよ!」


「よかった。リナリーにそう言ってもらえると作りがいがあるよ。」



そう言った彼の顔にはにっこりと柔らかい笑み。


この料理だけでお腹いっぱいになっちゃうのに、そんな笑顔見せられたらさらに満腹になっちゃうじゃない…。



でもこの居心地のいい時間は無限大。


新しく生まれてくる時間も、新しく迎える暖かみも、



全部限りのない幸福、満腹なんてことは考えられない。



「おかわりいっぱいあるからね?」





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