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□黒羽組の組長
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黒羽亜久魔。
黒羽組組長。
冷酷非情でまるで人間と思えない力で『悪魔』と呼ばれる男。
その非情さ故にどこに所属する事も無い。
孤独な組、黒羽組の組長。















「銀夜」
組長が俺の大好きな何時もの声で俺を呼ぶ。
「組長、何すか?」
「ごめんな」
「何がっすか?」
組長のでかいごつごつした手が俺の頭を撫で回してくれる。
「ごめんな」
「だから何がっすか?」
「俺な」







黒い羽根が舞い上がる。




その羽根はまるで










悪魔の「悪魔なんだ」それで











俺の目の前は真っ黒になった。





最後に見た組長の顔はいつものサングラスで分からなかったけど




何だか悲しそうな気がした。
















俺が気付くと事務所に俺しか居なかった。
「組長?」
返事なんかしない。
だって姿が無い。





この黒羽組、実は組長と俺しか居ない。
だから事務所には俺独りぼっち。
「組長?組長?何処っすか〜?」



俺は机の下やら机の引き出し、ソファーの下を調べるが組長は居ない。
「組長〜?」






組長は悪魔と呼ばれている。
そんな組長が自分は悪魔だと言った。



俺は組長を悪魔だと思った事なんか一度も無い。
だって組長は料理やお菓子作りが得意で子供や年寄りに優しくて動物だって好きで可愛い物とか大好きで




何より独りぼっちだった俺を救ってくれた。


「組長ぉ〜?」




黒い羽根が机に一つ落ちていた。
「………」
この世の中に悪魔が居ようと天使が居ようと関係ないんだ。


俺の世界を回すのはいつだって組長だけなんだ。





「組長…何処行ったんすかぁ…?」
黒い羽根が開いていた窓から入った風に飛ばされた。
「あっ…」












俺は黒い羽根を追い掛けた。






不思議な事に羽根はずっと落ちなかった。
ひらひら

ひらひら




羽根は風に乗ったまま。








「組長の…羽根だよな?」
組長に羽根が生えたのをこの目で見た…けど別に組長だし。
羽根位生えるだろ。
だって組長だし。


確かに組長はいつもサングラスに黒スーツで全身真っ黒だし
偶に角とか羽根とか出てたし




組長はよく言ってた。
『悪魔も天使も人間も皆、仲良く出来たら良いのにな』



組長は冷酷非情だとか言うけどそれは周りの奴らが悪いだけだ。
組長は弱い奴にはとことん優しかった。






『俺は皆が仲良く出来たら幸せだ』
『俺は組長と仲が良ければ良いっす』
『銀夜は素直だな』
『組長にだけっすよ』
『そうなのか?』





嗚呼本当に。
会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい。
あの顔が見たい。
あの声が聞きたい。
あの人に触れたい。







俺駄目なんだよね。
「お前黒羽の奴じゃん」
「一人で何してんだよ…ああ、いつも一人だっけ?何てったって黒羽の構成員はお前ひとー…」


ぐしゃ。


軽く殴ったら何か潰れる音がした。


 
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