オリジナル

□heaven's judgment
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俺には愛しい人が居た。
「シスター」
「アブソルート」
「シスター、見て」
「おや…綺麗な華ですね」
「あげる」
華なんかよりも美しく優しい人だった。
「うふふ、可愛いアブソルート」
とても素敵な人だった。
「貴方に神と聖霊の加護があります様に」
俺はそんな物より貴女がただ居てくれれば良かった。
俺には貴女が何よりの支えだった。


貴女が好き        だった。






貴女が尊敬する神様は俺には何にもしてくれなかった。
だって。
俺の大事な両親は死んだんだ。
神に救いを乞いながら
俺の可愛い妹は死んだんだ。
神の名を呼びながら




俺の目の前で



神様は何にもしてくれなかった。




それから


俺は天使が大嫌いになった。
神や天使に関する物なんか大嫌いだ。




それから俺はシスターには会わなかった。
「なあマリオ」
「何だ」
「俺は天使が大嫌いだ」
「知っている」
「何故あの時俺は死ねなかった?何故あの時俺は盗人に殺されなかった?」
「お前だけに神と聖霊の加護とやらがあったんだろう」
「神は差別をするのか」
目の前には天使が居る。
幼き少女の天使は老婆に神の在り方を説いている。
「知るか」


次の瞬間その天使の頭は吹っ飛んだ。
老婆に天使の血が降り注ぐ。
「その類が嫌いな俺にそんな事を聞いても答えは来ない、分かっているだろう?アブソルート大元帥」
「嗚呼…相変わらずお前は手が早いなマリオ大将」
マリオは銃を弄りながら俺を見る。
「お前の視界に神や天使が入る等…俺は許さない」
「優しいなマリオは」


老婆は俺達を見るなり慌てて逃げた。
当たり前だろう。
「…あれも処理するか?どうやら軍派じゃなさそうだ」
マリオが逃げ去る老婆に銃を向けたが俺は厳つい自分の手で銃口を塞ぐ。
「良いさ、神に縋りたいなら縋れば良い…いずれ気付くさ」



神は何にもしてくれないと。



俺は自分だけ助かった事を神に感謝した事なんざ無い。
むしろ優しさで家族と共に死なせてくれれば良かった。


家族しか身寄りの無い俺が家族を失った後なんざ一つしか無い。
一人孤独に生きたさ。


汚い事は沢山した。
殺したし盗んだ。



所詮力があれば良いんだろう?
神様が居ても自分を守るのは自分だ。





こんな生き方して来て今や俺は大元帥だ。
別にそんな事はどうでも良い。
ただ軍部には俺と同じく神や天使が大嫌いな奴ばかり。
何となくそれは俺を救ってくれる。


ほら、やっぱり俺を救ってくれるのは神や天使なんかじゃない。
「マリオ」
「…何だ?」
「冷えた…帰るぞ」
「了解した」



シスター、あの時貴女がくれた言葉は祈りなんかじゃなく呪いだと俺は思っています。



「そう言えば」
「ん?」
「あのシスターからプレゼントが届いているぞ」
「…」



嗚呼シスター、貴女は今何を思っているんですか?
「美しい華だ」
「……」








軍の建物の隣にあるデカい教会。
端から見たら滑稽だろう。
対立している軍と教会が並んであるんだから。
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