妄想の産物

□ある日暮れ前
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それは透き通るようなオレンジ
まるで今にも墜ちて来そうな空
目の前にはブルーグリーンの地中海が広がって

足下には人の血が蔓延って
時々目の端に黒い高速稼働体がチラつく

そんな黄昏時





























「…………綺麗な夕焼けですねぇ」

目の前で行われている残酷映写と打撃音
そしてそれに呼応した断末魔さえなければ、夕焼けに地中海、とても幻想的なシチュエーションだったんだろう












確かに自分でも暢気だ思うんですよ
突然の襲撃に1つも対応せず車の上に座って現状説明だなんて…

いや、別に好きでこんなとこに座ってる訳じゃないんですけど…


















∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞









何処の差し金か

恐らくたった二人と鷹をくくった奴らは、車を取り囲んだ後、僕らに、かする事すら出来無いままに地に伏してゆく

相手に隙は無かった
その事に彼は喜んだ


自分もプロである事に変わりはないし
その気持ちが解らない訳でもない



その後、隣の彼が笑った
その瞬間に一人目の敵が倒された



敵の殆どは見えて無かった
けれどその中の数人は雲雀恭弥の動く姿を目で捉えていた

それがいけなかった
その数人は彼の破壊精神を中途半端に刺激してしまっていた



もしかして戦って愉しめる相手なのか?と

確かに自分も少しの期待はした








けど彼の場合は思うより先に、猫の様なしなる身体が動いてた

飛び出すと同時に
邪魔しないでね、と
暗に僕に手を出すなと
此方に言い残して



そんな勝手に!
反論しようと口が開いた時、彼は既に敵陣のド真ん中


悲しい事だけどそれが現実











僅かながらに寄せた期待は、ほんの三分足らずでハズレと判る
ほんの三分で、その数人は倒されていた



「折角、少しは期待したのに…」
物足りない、裏切られたよ、
等と、心にも無い事を残りの残党達に言い放つ


「君達程度じゃあ僕は楽しめないね」

あくまでも自分だけが楽しむつもりなんですね




「そうだ、ハンデをあげよう」

そう高らかに宣言してから雲雀恭弥は全く匣兵器を使わず戦っている

戦っている、と云うより間合いに入った物を無差別に片っ端から吹き飛ばしている

自分の匣兵器を吹き飛ばす心配がないから、安心して無差別攻撃をしてる訳だ





証拠に先程から、彼は敵を見てはいない

故に巻き添えを食わぬ様に現在自分は車の上に避難してるのだ

彼は敵と自分を間違えて攻撃しても、きっと謝りもしないんだろう

寧ろ嬉々として攻撃してくるんでしょうね









………何だか哀しくなって来ました

片手で目尻を押さえて眼を閉じて項垂れていると横から声が聞こえた




「終わったよ」

「早かったですね」


あれ、さっきより早くありませんでしたか?




車から降りて周りを見ると




死屍累々



そんな感じで、浜に揚げられた魚の様に
また、子供が散らかした後の部屋の様に

周りには大量の人が転がっていた




だが、車の走る経路の部分だけは何も倒れてはいなかった


それを見て、彼もプロだ、只の戦闘マニアではないと改めて認識する




「誰が戦闘マニア?」

「クフフ、君以外に誰がいるんです?」

「君がいるでしょ」

「失礼ですよ雲雀君」


クッフー!違いますよ全く











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